2011/11/25

「対比」というルール

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昨日のことですけど。

夜遅くまで外でメシ食って、寒いわーとか言いながら帰宅して。帰ってきて温かい風呂に入った瞬間、なぜか、『あー寒っ!』と言ってしまった。あのほら、寒いところにいて、急にあったかい風呂に入るとぞぞぞぞってなるやつあるじゃないですか、あれに対して出た、とっさの一言。

まったく無意識だったのに、不思議だなあと思って。多分、外で北風を身体に受けているときよりもどのときよりも、その瞬間が自分の気持ちにとって「寒かった」んだと思う。実際寒いところにいるより、風呂があったかく感じる季節になったということから、寒くなったことをより強く感じている、みたいな。

ちょっと哲学的になるけど、おそらく世の中の事実という事実は、自分という心のフィルターを通ってでしか自覚できなくて、「絶対事実」なんてものは自分にとっては存在しないのかも知れないなあなんて思ったのね。結局は、何を思うのかが、その人にとっての事実。いや事実っていうと語弊があるから、ホンシツとでも言っておきましょうか。”寒空から風呂”という行動が自分の心にもたらした本質は、「すっかり寒くなったわあ」という体感だったわけで、その風呂が何℃だったかよりも、その感覚の方が勝ったということなんでしょう。

多分、「対比」というルールが体感には存在しているんだろうね。そのときの事実よりも、それによって相対化される反対側の事象に、より心のスポットが当たる、的な。そんなことを湯船でふと考えていたわけです。

ちなみに、コンマ何秒後には、「いやーーあったけ~~~」ってなってたんだけどね。でもこういう心の気づきをちゃんとキャッチできるように、常に構えていたいものです。なんてメモ。

2011/11/24

新しい”知り合い”の形

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Facebookアプリ 「Social Graph」で作ったマップ。
お互いのつながりが集中しているところにはピンクの円で、
「クラスター」が形成されています。
僕の場合は、中学、大学サークル、留学仲間、会社同僚、ライター講座に、
クラスターが形成されてます。
「人が人生を創る」とはまあこんな感じなんでしょうか。
こんな”情報”チックなもんではないけどね、人生は。


毎日、電車で見かける人。駅で会う人。会社で見かけるけど名前は知らない人。コンビニの店員。バスの運転手… 人生はたくさんの「知り合い」で外堀を構成されているように思うんですが(決して”知り合い”のままではそれ以上、内側には入ってこない)、なんだか最近、新しい”知り合い”を自覚することがあるのね。”知り合い”っていうのは、「お互いがお互いを知っていて」「かつ、相手が自分のことをおそらく認識しているということを自分も自覚している」相手だと思うのですけど、それに該当するっていう意味で。

毎日、顔を合わせて、場合によっちゃあ目があって、名前もばっちりわかって、あげく「お前の友達の誰だれって、おれも知ってるよ」とまで聞いてもないのにアピってくる。まあ多分、本人にはその意思はないんだけど。っていうか意思どころかそうやって自分の前に出てきていることすら知らないのかも知れないけど。翻って考えれば、もしかしたらそいつの目の前に自分もそうやって出てきているのかも知れないなんて、思えたりもする。

しかもそれが、ホントは知り合いじゃなかったりするんだから、驚いちゃうよね。僕はこないだ、「浅野忠信」さんとか「矢野顕子」さんにそんなことされたもんだから、その人たちの場合はそうされる前から、僕は知ってたけどさ。多分本人は絶対にそんなことになってうちの目の前に現れていることを知らないんだろうね。

不思議な、新しい”知り合い”の関係だなあと思ってふと。知り合いじゃないのに、むしろそうして毎日出てくることで、もはや知り合っちゃうような。今まで、「実存する人間関係の拡張」という位置づけで見てたんだけど、こうやって考えると、新しい人間関係は生まれているんだろうね。

上のマップのパスがどれだけ多いかで、単純に出しているだけなんだろうけど、毎日出会うあの人、っていうのがいる。そんなfacebook。テクノロジーが及ぼすこういう、人間のふにゃっとした感情を考えるのが好き。そんなメモでした。

2011/11/21

自分の”好き”を試す・高める

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【RhienⅡ】
 Andreas Gursky 1999

先週のある日のとくダネ!で報道されていた、世界最高額の写真。アンドレアス・グルスキー氏による、「RheinⅡ」という作品。ライン川をスティッチング技法 (複数に切り分けた写真をつなげ合わせて1枚画にする技法で、より高精細な画づくりを実現する)で波の山までキレイに合わせたっつー作品で、なんと、430万ドル(約3億3000万円)で、こないだクリスティーズで落札されたそうな。

グルスキー作品は、以前、伊藤直樹氏と幅允孝氏の対談「ホントーク」で伊藤さんがマイベスト5冊のひとつとして挙げていたのが、彼の写真集ビル・マスゲーム・工場・駐車場・・・などなど、人工的幾何学的な風景を絶妙に空怖い角度で切り抜く、いわゆるコンセプトがすごいタイプの写真家の方で、なんともいえない人工物への畏怖みたいな念が去来したのを覚えてます。このライン川の写真も実は、犬の散歩をする人も、遠くに見える工場も、木々も、全てデジタル加工で消している。もはや写実というよりも、自らの審美眼・コンセプトをもって作り出された作品なわーけー。


まあもはや、3億が妥当かどうかの議論は、うちらにはできないんだろうね、だってこのほかに3億の価値があるものを何か知っているかっていうと知らないわけで、基準がないんだから。「自分だったら3億持ってたら買うかどうか」っていう基準は、「3億の価値がある」っていう議論とはホントは別だしね。


大事なのは、「自分が好きかどうか」を自分の中で感じることなんだろうな。


「好き」という感情は、とっても感性的で不確かで自分でもよくわからないもので、なのにそれに気づきにくいものであるね。「自分が好きなことなんて自分でわかってます!」っていうのは、きっと浅はかな認識やんね。だからこそ、いろんなものにぶつかって、他の人とか世の中の評価がどうとか関係なく、「自分が好きかどうか」を絶対評価することを積み重ねていって、「好きを濃く」していくのがいいんでしょね。

好きを濃く” っていう、今年のテーマを図らずも思い出した、グルスキーさんの写真のニュースでした。やっぱり、とんがったものは自分の審美眼が揺さぶられて気持ちがいい。

2011/11/14

「新しい技術による、新しい物語を。」:東京企画構想学舎 第2期 企画12人セミナー No.8 【伊藤直樹氏】

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第1期 伊藤学科のログはこちら(途中ですw)

1期・前回までのログ
  
東京企画構想学舎第二期8回目。クリエイティブディレクターの伊藤直樹氏のセミナーです。1年前の今頃から、東京企画構想学舎第一期生として伊藤直樹学科に通ったときからのお世話様なので、今回はどんな話が聞けるのか。この1年で伊藤さん自身にもいろいろな変化があったので、その辺の話を聞けることを期待しつつ挑んだ授業。期待通りのお話しでした。では!

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 伊藤直樹 (クリエイティブディレクター)
1971年静岡生まれ。クリエイティブディレクター。
「経験の記憶」をよりどころにした「身体性」や「体験」を伴うコミュニケーションのデザインは
広告の枠を超えて大きな話題を呼び国際的にも高い関心を集めている。
2007年以降4年の間に国内外の130以上に及ぶ広告賞・デザイン賞を受賞。
カンヌ国際広告祭においては、3年連続日本人受賞記録最多となる5つの金賞を含む13のライオン(賞)を獲得。
相模ゴム工業との作品LOVEDISTANCE では日本人として13年ぶりとなるTVCM部門での金賞を獲得。
ADK、GT、ワイデン+ケネディ トウキョウ代表を経て、2011年クリエイティブラボ「PARTY」を設立。
チーフクリエイティブオフィサー(CCO)を務める。
2009年9月著書"「伝わる」のルール"を上梓。
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物語技術の研究所
 
昨年、講義を受けた時と大きく異なる点としては、伊藤さんが自らの会社「PARTY」を設立したということ。会社設立の込めた思いと、その理由から講義はスタートしました。そもそも「PARTY」という会社は何の会社なのか? CEOの原野守弘氏と語りつくしたという会社の定義は、【Creative Lab】。 より噛み砕いた形で伊藤さんは、「物語技術の研究所」という言葉で説明してくれました。

【PARTY】
Creative Lab.
左から、原野守弘氏、川村真司氏、伊藤直樹氏、清水幹太氏、中村洋基氏



「学生の頃は映画監督になりたくて、その時からシナリオや構成に興味があった。実際に映像を作る中で、”ストーリーにおける文法”というものは確実に存在していると思った。」


「その”ストーリーにおける文法”を新しく変えるのが、テクノロジーなのではと思った。当時でいう、macやQuadro、カメラだとVX1000が、それまでプロの世界のものだった映像制作を、人々の手の届く形にして、それによって新しい文法がたくさん生まれたように。」


新しい技術による、新しい物語。今まで見たことも聞いたことも、体験したこともないような物語を、技術によって実現する、研究所。テクノロジーが目覚ましく発展していく現代において、その研究のフィールドは製品やサービスはもちろん、プラットフォームやコンテンツ、空間にまで、なんにでも介在する余地がたくさん残っていると伊藤さんは言います。


「近い将来、全ての電子商品の進化の先には、インターフェース化があると思う。それが意味することは、全ての商品に”コミュニケーション”が発生するということ。メーカーの人がプロフェッショナルではないその分野において、コミュニケーションのプロが生きていく余地、マーケットが広がる余地が大きいと考えた。」


電子化の先の、インタラクティブ性、やり取り。製品そのものの性能が上限まで達しつつある現在、その向こう側の体験を提供するインターフェイスとしての商品の向上という先見に立った場合、伊藤さんのいうことはビジネスの観点からしても至極全う。これは猪子寿之氏が授業 (→コチラ) で語っていたこととも符合します。商品・サービスにコミュニケーションが介在していく、いわば”消費経済3.0”みたいな未来を先見したうえで、コミュニケーションの物語を作ることと、それを新しい体験として実現するための技術力をもって設立されたのが、PARTYってわけです。





ユーザーインサイト・テクニカルインサイト
 
「新しい技術による、新しい物語」を作る。まだまだ始まったばかりではありますが、PARTYのアウトプットを実際に事例として取り上げながら、具体的にどういうことなのかを続いて説明いただきます。



Case1
【Toy Toyota "Backseat Driver"】
トヨタと共同で開発した、ちょっと遊べるゲームアプリ。
後部座席に乗った子供が、まったく新しい「運転ごっこ」できる。
実際、走行している道のりや施設などを抽出し、
コースやアイテムなどを配置。
走る距離やルートの応じてゲームの内容やポイントが変化していく。
子供に運転の楽しさを、新しい形で提供する作品。


この企画を立案するにあたってまず考えたのが、インサイト。伊藤さんは、「ほとんどの子供は、親のマネっことして”運転ごっこ”をしたことがある」という事実から、”子供は運転してみたいと思っている”というシンプルなインサイトを導き出します。人によって定義が少しずつ違う、”インサイト”という言葉。伊藤さんが考える、”インサイト”とは?



「インサイトとは、普遍的にみんなは、”実は”思っていることを探るという行為、もしくは思っていることそのもの。インサイトを見つけることは、具体のアイデアを考えることよりも断然重要で、それがないとプレゼンはなかなか通らない。」


インサイトを見つけるべく、PARTYでは「インサイト会議」なるものを行うそうです。会議自体に具体的なアウトプットのゴールを設けずに、参加者が気になること、ふと引っかかったことを徹底的に語り合う会議。ふとした疑問から普遍的なインサイトが見つかるといいます。で、伊藤さんおよびPARTYの独特の”インサイト”の定義づけはここから。彼らはインサイトを以下の二つに分けているそうで。

ユーザーインサイト × テクニカルインサイト


「既存の技術をどう使うか。”こんなことできない?”  ”こんなことができたらもっとよくなるのに。”  ”実はもう実現されてるんじゃないの?” などなど。テクニカルインサイトとは、こういうこと。そこに、新しい物語の紡ぎ方のヒントが潜んでいる。」


ToyToyotaの事例でいうと、実際に実装されている技術は【GPS】 【傾きセンサー】 【FoursquareのAPI】の3つがメイン。この技術の存在を知らなければ、この企画は絶対に成り立たないわけです。「子供が後部座席で、実際の道みたいなコースをゲームで走れたら楽しそうだよねー!」という物語を紡ぐだけではダメで、そこで「建物の位置情報はFoursquareのオープンAPIから抽出できますよ」と気づく人がいないといけない。”技術を使ってどんなことをしたいか・できるか”を考えることが「テクノロジーに対する洞察=テクニカルインサイト」というわけです。PARTYが「物語技術の研究所」を標榜しているのは、こういうアウトプットを世の中に出して如何がため、ということ。そしてこの動き方を実現するためのドリームチームだってわけです。



CD-TC制
 
新しい技術による新しい物語。それを実現するための考え方としての、「ユーザーインサイト」と「テクニカルインサイト」。ではそれを実際、仕事をするうえでのチーム作りとしてどのように担保しているのか。次の事例を通じて説明いただきます。

Case2
【androp "Bright Siren" PV】
新進ロックバンド「androp」 1stAlbumより、
「Bright Siren」のプロモーションビデオ。
250台のデジタルカメラの櫓を組み、ストロボをデジタルコントロールできる仕組みを構築。
ストロボの光でさまざまなサインを実現するとともに、
そこで実際に撮影された一部の写真をストップモーションで見せる。
Webサイトでは自分の任意のメッセージを表示できる
インタラクティブ性も担保。
技術性とビジュアルの両面において新しいチャレンジといえる意欲作。



この作品は、PARTYから川村真司氏と清水幹太氏の両名と、映像ディレクターの長添雅嗣氏によって手がけられたものです。特に川村氏と清水氏の役割について、伊藤さんはこう整理します。


どんなプログラムを使って、どんなビジュアルを作るのか。プログラムとビジュアルを同時に考えて、フィジビリティを検証しながら同時に作っていく必要がある。そのためにPARTYは、CD-TD制でチームを組むことが多い。」


この場合はCD(=クリエイティブ・ディレクター)は川村氏、TD(=テクニカル・ディレクター)は清水氏というわけです。その座組みはそのまま、「物語」と「技術」を研究するPARTYの目指すところを体現してるってわけ。その二つの役割がシナジーするうえで、伊藤さんは「ビジュアルランゲージ」の重要性も併せて話しておりました。

「アイデアを考えるときに、ビジュアルを見つける力。”画が浮かぶ” ”自分でやりたいことが自分で視覚的に見えている” ことは超重要。それがなければどんなに文字で説明しても相手の頭に完成図は浮かばない。」


「必ずしも企画書上にポンチ画が書いてある必要はないが、画で考えるのはマストだと思う。それが弱い人は克服した方がいい。写真を撮る、画を書く、イラストを描くなどなど。なんでもいいのでクセをつけよう」


物語を紡ぐ人と、技術でそれを実現しようとする人。両者をつなぐのは「で、何が出来上がるのか?」「どういう世の中になるのか」という、ビジュアルというわけです。そこがイメージできていないアイデアは、理屈からしか成り立っていない恐れがある。人それぞれ、考えのクセや過程は異なるし、異なっていていいと思うんですけど、新しいことを世の中に具現しようとするのなら、どこかのタイミングで必ず、ビジュアルで発想する必要はあると伊藤さんは言います。


「アイデアは結構、非言語で形づくられるが、考え始めは言語で考えることが多いと思う。インサイトも洞察なので、つまり言語で整理している。大事なのは言語での思考を経て、非言語の画に昇華すること


世の中に存在しているものはすべからく「具体的」なわけで、下手でもなんでもいいので、そこを非言語でとらえて、非言語的に共有すること。とかく”誰も見たことのないモノ”を作るのなら、マストというわけです。ついつい言葉だけで机上の空論をこねがちな自分は、ここは激しく自戒ですね…





体験をデザインする
 
伊藤さんといえば、体験・身体性。広告というフィールドに縛られる必要がなくなった今年の、もっとも象徴的といえるかもしれないアウトプットを紹介しながら、これからのコミュニケーションの形について話してもらいました。



 Case3
【COG】
10月にオープンした有楽町ルミネの地下の【WIRED CAFE<>FITに設置された、
「有酸素運動×エンターテイメント」を形にしたバイクプログラム。
トレッドミル本体だけでなく壁や扇風機など、
空間すべてがインターフェースとして利用者と呼応する。
ハンドル面に設置されたiPadからは実際に屋外を走るかのような、
さまざま”疑似風景”が流れ、そこでのシーンに合わせて、
巨大扇風機から風が送り込まれる。
壁のLEDやBGMなど、全てが、
「ただ一定時間漕ぐことを耐え抜く」だけだった従来のトレッドミルを、
楽しく体験できるものに変えた、これまた意欲作。



「スポーツが大好きなので、スポーツシーンがダサいのが許せない。ジムのトレッドミルもダサいし、退屈。それを変える余地があるのではないかと思って取り組んだプロジェクト。」


自身もトライアスロンにいそしむほどの超肉体派の伊藤さん。プライベートで実際に伊藤さんについているトレーナーの湯本優氏とも協働してこの作品は出来てるわけです。この作品の最大の特徴は、トレッドミルだけでなく、トレーニング空間全体をインターフェースと捉え、ここでしか体験できない「物語」を立ち上げている点。”体験と物語”について伊藤さんはこう話します。


「体験をデザインする。いわば遊園地のジェットコースターやお化け屋敷を設計するような。人の動線を考え、動きを夢想し、そこでの人のアクションとそこから立ちおこる感情をも設計する。そこには環境と人とのインタラクティブなやり取りがあり、特有の物語が立ち上がり、それこそコミュニケーションだと思う。」


インタラクティヴというと、特に広告業界では「ウェブ・ネット」を思い浮かべる人がまだまだ多いですが、伊藤さんは「相互作用が存在している」というもっと上位のとらえ方をしているわけです。そしてそこには「技術による万物のインターフェース化」の未開の地が広がっていて、PARTYはそこに実験精神をもって挑もうということ。そこにはもはや広告かどうかという垣根はないんだろうなあ。(とはいえ、広告畑の人たちですからその手の作品が多いのはこれからもそうなんだろうけど)





二極のはざまにチャンスがある
 
物語と技術。クリエイティブとテクノロジー。言語と非言語。これまでなかなか同時に語られることのなかった二極を、新しい形で結びつけて協働していくことが彼の大きなテーマなんだと思ったわけですが、最後にまとめとして伊藤さんはこういいます。



「文系と理系。文化系と体育会系。文学性と工学性。今までは何かと対立構造で語られがちだったが、これからはこの両者がコラボし、垣根を越えてこそ、新しいことを実現するチャンスに多く巡り合えると思う。もちろん一人の人が両方できるのもよし。」


新しい企画を世の中に出すための、新しいプロセス、新しいチーム。今年は彼自身も新しい1年だったと思うのですが、そんな中での新鮮な話を聞けたのは収穫でした。以上!

~~~

講義から、考えたコト

スティーヴ・ジョブズはまごうことなき稀代のクリエイティブ・ディレクターであり、ストーリーテラーであり、未来を見せてくれる預言者だったと思うんですけど、彼ですら、傍らにはスティーブ・ウォズニアックという稀代のエンジニアがいたわけです。どちらか一人しかいなかったら、今のApple社は存在していないかも知れないわけで、彼らが紡いだ「物語」は「技術」によってつれて来れられた未来なんだと個人的に思う。伊藤さんがPARTYで目指したい「物語技術」は、Appleの始祖である二人の関係性となんだか似ているなあと、ふと思いました。


PARTYのアウトプットを、これまでの広告コミュニケーションの土俵で評価することはおそらく間違えなんだと思ったのが、もう一つの感想。「物語技術の研究」を通じて、「新しい物語を紡ぐ」ことが彼らのミッションなんだと知れたことによって、既存の広告的成功の指標は必ずしも、彼らの行動規範にはなっていないんじゃないか?と、率直に思った。もちろんクライアントビジネスにおける成功は担保しないとプロじゃないし、そこはクリアされたうえでの話だと思いますが。きっともっと、大きなところを見ているんじゃないでしょうか。とにかく、とりあえず体験してみないと何とも言ってはいけないと思ったので、COGには近々行ってみようかなと思います笑


最後に生徒からの質問で、「なぜ、アイデアを考える前に”まず泣く”のですか」というものがありました。確か仕事術の雑誌か何かで伊藤さんは、「発想する前に、まず泣く」と言ってたっけ。泣くことは、思い出すこと、自分の過去と何かが共鳴することであって、それによって記憶と感情の回路を開く、というのが彼の答でした。話しぶりから分かることですが、とってもフィジカルで、フィーリングも同時に相当大事にするのが彼のスタイル。時々振り落とされそうになることもありますが、やっぱり刺激的なお話しでした。ちゃんちゃん。

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次回は、編集者の後藤繁雄氏。以前一度、お話しをうかがう機会がありましたが、この人も、この人しか見えていない世界がある人だと思っていますので、今から楽しみです。こうご期待カミングスーン!



(文・吉田将英)

2011/11/10

ASIMO先生とヴェルヌ先生

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ジュール・ヴェルヌは「人が想像できることは、必ず人が実現できる」といった。そんな言葉がふと去来した、新型ASIMO。素直に、すごいと感じたわけで、人って然う然うなかなか素直にすごいって思わないから、本当にすごいんだと思う。

日々、「今」を積み重ねて暮らしていく中で、どれだけ「未来」のことを考える時間が持ててるかって、実はすんごい大事なことで。それは自分のこと、周りの人のこと、社会全体のこと、なんでもいいんだと思うけど、「こうだったらステキなのに」「きっとこう良くなっていくんだろう」とか、ポジティブに理想論的に未来のことを考えることが、結局、未来を創っていくんだろうなあ。

ヴェルヌの言葉を逆説解釈するならば、「想像できもしないことを、実現なんて絶対に出来ない」ということ。やりたいと強く願うだけでは何も実現されないのは当然だけど、願わなくては何も形にならないんだと思う。もしかしたら、手塚治虫が鉄腕アトムを描かなければ、ASIMOはこの世に存在していないかもしれない。きっと、想像と創造の関係ってそういうことなんだと思う。

何より新しいことは、人の概念を揺さぶるし、価値観に波紋を起こす。それが多分、人間っていう生き物が社会っていう集団を形成して楽しく幸せに継続的に生きながらえる上で、必要な自浄作用なんだと最近は定義してるんです。具体的に、空腹が満たせたり、不便が改善されたり、安全が確保できることは、すべからく重要だけど、未来を思い描き見せることも、バイタルだと思うんだ。

だから自分は、そういうことで、誰かの役に立ちたいなあなんて、ASIMOは思い出させてくれました。

2011/11/08

「未来を創ることは、夢を創ること」:東京企画構想学舎 第2期 企画12人セミナー No.7 【高松聡氏】その2

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1期・前回までのログ
  
東京企画構想学舎第二期7回目(欠席してしまって間が抜けちゃってますが、後日書きます)。クリエイティブディレクターの高松聡氏のセミナーです。前篇(コチラ)では、企画構想というものに対する高松さん流の向き合い方・とらえ方を話してくれたわけですが、後篇ではそれらの考え方が実際の事例でどのように発露されたか、当時の生々しい体験を(ここにも書けないような内容も含めて…)聞けました。ではでは。

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 高松聡 (クリエイティブディレクター)
1963年生まれ。電通に入社後、営業局を経てクリエーティブ局に転局。
2005年にクリエイティブ・エージェンシーgroundを設立。
主な仕事に、日清カップヌードル「NO BORDER」・「FREEDOM」、NTTレゾナント「教えて!goo」、
アディダス「日本代表キャンペーン」「読売巨人軍」、オリンパス「Eシリーズ」「PEN」、
KDDI 「iida」「What's android au?」、
UNIQLO「ヒートテック」「UJ」「UT」など。
朝日広告賞、TCC賞、TIAAゴールドなどに加え、カンヌ国際広告祭金賞、クリオ賞グランプリ、
アドフェストグランプリ、ロンドン国際広告祭金賞、NYADC金賞など海外広告賞も多数受賞。
国内外広告賞で審査員も勤める。世界初となる宇宙ステーションでのCM撮影成功後、
恒常的な宇宙での撮影インフラ確立を目指し、(株)SPACE FILMSを設立。
2011年には宇宙旅行会社(株)SPACE TRAVELを設立、代表取締役を務める。
近年は、企業戦略、ビジネスモデルや、商品企画のコンサルティング活動も増えている。
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話題を作る企画作り
 
実際に高松さんが世の中に生み出した企画を事例として取り上げながら、当時の裏話も絡めながら彼の企画術に迫ります。高松さんの企画の特徴は、「前例のないこと」「途方もなくスケールの大きいこと」「話題になること」の3つでしょうか。普通の人はまず予算金額ありきで企画のスケールを決めて、そこから企画を逆算することがほとんどだと思いますが、高松さんは予算金額からスタートする企画術には懐疑的です。彼は企画術のポイントとともに、こんなことをおっしゃってました。

「予算は最初に決まっている条件で、そこから考えると思考の量の無駄が減らせるとみんな考えるので、そこから考えがち。もちろんそれは間違っていないけど、予算額の外側にどうやってはみ出るか、そこにも企画構想力は活きる。少ない予算・小さいことでも話題化する方法が何かないか。予算金額を発想のブレーキにしてはもったいない。」

小さいことを大きく企画する考え方
予算=効果ではない。
メディアバイイングから、トークバリューへ。
内輪受けから、ソーシャル受けへ。
地域受けから、グローバル受けへ。
最大のスケールで効果を狙う。

小さく考えずに、振り抜くつもりで考えて、実現のための障壁を信じられない手間をかけてすべてつぶしていく。事例を通してそれを見せてくれました。


Case1
【goo渋谷】
Yahoo!が巨人として君臨していた当時の国内検索エンジン業界。
年末に発表される「年間検索ワードランキング」をどうやってニュースにするかという企画。
与えられた予算は、新聞15段広告程度と限られていた。
しかもgoo検索のランキング1位はなんと、「Yahoo」だった…
解決策を探りランキングを眺めている中 、高松さんが得た気づきが、
「ランキング下位にいけばいくほど、その年の日本の関心事がわかり、面白い」ということだった。
そこで1000人のエキストラに上位1000位までの単語の入ったTシャツを着せ、
渋谷の街中に放つというキャンペーンを敢行。
ワードを着る人の行動や場所、組み合わせなどを工夫したことでネット上のバズを創りつつ、
圧倒的な違和感を街に振りまき、結果としてNHKのニュースにまで取り上げられた。
原価はほとんど、バイトさんたちの日当5000円のみ。
約束通り、新聞15段広告と同等額で実施することに成功した。

「当然、反対するクライアントの方もいました。このときは、”予算が安かったこと”が説得の一番のポイントだったかも。あと間違いないのは、”結果を出すこと”です。この企画で結果を出せたことが次の提案に対する障壁をガッと下げてくれました。





Case2
【教えてgoo】
一般の人の質問に一般の人が答える「教えてgoo」。
92%の回答満足度はYahooのそれを上回る結果だった。
予算は、スポットCMをそこそこ打てる程度。
高松さんは、「知ってそうで実は知らない、誰に聞いたらいいかわからないこと」がわかる、
それをこのサービスのUSPと据え、メディアニュートラルな企画を立案した。
ほぼすべての予算を「駅貼りOOH」に集中投下。
東京と大阪で買えるだけの枠を1週間、買い占めた。
スポットCMにリーチでは劣るかもしれないが、
1日片道で乗り換え含めて3回×行き帰りで2タイミング×5平日と考えても、
1週間で30回の驚異的フリークエンシーをとることに成功。
100万円をかけた検索クイズキャンペーンや、最速検索王選手権なども平行実施し、
話題を短期間で最大限に増幅させた。

「結果を出したことで信頼は徐々に築いていけたが、加えて説得のポイントになったのは数字。どうしてスポットCMではなく駅貼りジャックなのか。感覚ではなく、かといって専門的な難しい数字でもない、誰でも肌感で違いや優先順位がわかってもらえるような数字をしっかり見せるのは、強い。



Case3
【スカパー! WORLD CUP PUBLIC VIEWING】
実はパブリックビューイングという文化を創ったのも高松さん。
当時のクライアント、スカパーさんは日韓ワールドカップの全試合の放映権を買ったものの、
その後、NHKが主要40試合の放映権を購入。
民放でタダでメインどころが観れてしまう状況に危機感を感じたスカパーからの、
「スカパーならではのワールドカップの価値を話題化したい」というのがお題でした。
訳あって、なんと予算はゼロ!そこから高松さんの企画がスタートします。
当時、高松さんはイチサッカーファンとしてWCの状況に腹が立っていたらしく、
「なんで自国開催なのにほとんどの人がTVで観ないといけないのか」
「肝心の東京都内のスタジアムでなんでやらないんだ」
「座席が完全抽選で、本当に熱望した人の手にチケットがいかないのはなんでだ!」
などなど。この不幸な形を変えたい!という私的な熱意で思いついた企画が、
国立競技場を借り切った、パブリックビューイングだった。
社内も管轄警察も大反対の危なっかしい企画にも関わらず、
ありとあらゆる人脈を使って地道に交渉することですべてをクリア。
予算ゼロの壁も、入場料を設定することで競技場使用料を充当しようと狙った。
初戦はガラガラだったものの、自らネット中の掲示板にあえて悪評を書くことによって、
好評バズを誘因するなど、背に腹のかえられない日々を乗り越えて、
最終的には超満員を実現した。
その後、国内のパブリックビューイングにはすべてスカパーロゴをのせるという
権利を作成・保有することを実現したことによって、
全国各地のパブリックビューイングを通じて多くの人が「スカパーのWC」を体験することに。


「予算がゼロなんて聞いたことがなかったが、”企画をやりながら稼ぐ”というスタイルを思いついてからは一気に自由になれた。もちろん、ここまでいくと興行になってしまうので、広告代理店的にはなかなかGOサインが出なくてとても苦労したし、初戦がガラガラだったときは死ぬほど焦ったけど。リスクをここまでとれるかというのも大事なポイントだと思うし、この時はサッカーへの愛がそれを乗り越えさせてくれた。



予算の枠の外側へ。

予算が少ないことを、知恵によってどう乗り越えるか。高松さんの代表作ともいえるだろうこの作品からもその企画魂はうかがえます。みんな知っているあるCMシリーズを2つ。


【消える国境編】


【少年編】

【地球編】

Case4
【カップヌードル ”NO BORDER”プロジェクト】
日清カップヌードルが2003年から実施した2年がかりのCMシリーズ。
合計8本のCMを制作し、最終的には宇宙での撮影を敢行。
一広告キャンペーンとしては最大級のスケールで展開された。


日清の企業理念のひとつである、「食足世平=”食足りて世は平らか”」。食はすべての源であり、芸術も文化も思想もすべては食が足りてこそ成り立っているという、創業者・安藤百福氏の言葉です。高松さんはこの企業理念に感銘を受け、その理念を最大化して伝えることこそ、日清カップヌードルが体現するべきブランドの形であると社長に熱弁、一発でプレゼンを通したそうです。その時の日清と高松さんの共通の”夢”が、「カップヌードルを宇宙に持っていく」ことだった。食こそ平和の源であり、それを理念として掲げる日清の看板商品だからこそ、宇宙から地球を眺めて、食べられる形にしたい。理屈を超えた大きな夢を共有できたわけです。

2年かけて順調にCMを展開していくのと同時に(上の少年編はいろいろと抗議があってすぐに中止になったようですが…)、カップヌードルを宇宙に持っていく計画も進行させていきました。出来上がりを知っている我々からすれば、大企業が莫大な予算をつけてやった、予算の壁の向こう側にある企画だと思いがちだけど、さにあらず。高松さんはJAXAの「宇宙ベンチャー制度」に着目します。宇宙開発に寄与する企業に奨励金を出すというこの制度を利用し撮影資金を得るために「株式会社スペースフィルムズ」を設立。見事に奨励金をゲットします。

商品開発も進行し、世界初の宇宙食ラーメン「スペースラム」が完成。2005年10月1日に打ち上げられたソユーズロケットに撮影機材一式とともに載せられ、宇宙に放たれます。国際宇宙ステーション(ISS)と地上管制センター間の「リアルタイムダウンリンク」による10分間の交信により撮影指示を地上から出すなど、一企業の広告活動としては信じられないスケールで、当初の夢を達成したわけです。

「信じられないほどの低予算で、これは実現されてます。それも、日清さんの普遍的で万人が共感できる企業理念と、そこから根ざした骨太なメッセージ、そして宇宙にカップヌードルを持っていくという夢があり、それの持つ引力が大勢の人を巻き込んでどんどんと大きくなっていったからに尽きる。


「予算がないから予算の範囲で企画するのが普通ですが、本来は予算よりもメッセージの方が大事。予算はあくまでこちらの都合ですから。だから、メッセージが譲れないのなら、予算をどうやって”増やせるか””使わずに実現するか”、メッセージを実現するために本気で考えます。」


普通の人なら何万回あきらめるか分からないくらいのスケールと実現難易度。「宇宙でカップヌードル食いながら、地球を撮って企業理念伝えましょう!」という企画自体、もしかしたら他の誰かでも思いついたかも知れないけど、「構想力」において、いかに高松さんが図抜けているか、衝撃の事例でした。





Case5
【カップヌードル ”FREEDOM”プロジェクト】
NO BORDERに続いて2年がかりで展開された日清カップヌードルのコマーシャルプロジェクト。
「NO BORDERでスケールが最高潮まで行ってしまい、やることがなくなった笑」と
高松さんが出した答えが、アニメーションにすることだった。
生半可なクオリティではなくプロのアニメーションで見せるべく、
大友克洋を起用して、アニメーションプロジェクトを結成。
テーマソングに宇多田ヒカル書下ろしの「This is Love」を使用し、
CMでは考えられないクオリティとスケールのアニメーションを繰り広げた。




「普通にCMだけのための座組みとしてとらえたら、予算はまらないんですよ。だから、キャラクタービジネスに風呂敷を大きく広げて、グッズ販売、ノベライズ、DVDなどの二次利用などで大きく展開しました。CMからはお金取れないけど、そうやってお金を取る仕組みに広げることによって、日清さん・制作チーム・電通と、もちろんFREEDOMを気に入ってくれたみんなの、全てにハッピーでフィジブルな仕組みにしました。

予算がないなら、稼ぎながら大きくふくらます。理屈はみんな分かると思うけど、すごく体力と根気がいるから、やる気に中々なれないし、上司がGOサイン出さないと思います笑 僕も何回かクビになりかけましたけど、そうまでして伝えたいことがあったし、”夢”があった。これを成し遂げれば世の中が少し良い方向に向かうんじゃないかという、そんな感じが。だからやれちゃいました。」



最終的には2年間で10本のCMを展開。DVDなどの関連グッズも日本のみならず世界中で好評となり、予算問題も当然クリア。高松さんの構想力が見事に分かる事例でした。


未来を創ること。

まとめとして、高松さんは次のようなことを話してくれました。

「未来を創るということは、自分がやらなくてもそのうちに誰かがいつかやることを、成し遂げること。アインシュタインの相対性理論ですら、数十年後にはだれかが立証していたといわれています。ただ、自分がそれをすることによって少しだけ早く、未来を手繰り寄せることができる。それは世の中にとって間違いなくプラスになると思っている。」

自分の夢と、企業の夢と、社会の夢が重なるところを見つける。そこを形にする。それを自分は今までやってきた。そこに納得してもらって、多くの人を巻き込んで、一人ではとてもできないような規模のことをやらせてもらってきたと思います。そう考えると、自分の夢ってなんなのか、人生の企画ができていないと、とても耐えられない労力だと思う。まずは人生の企画をすることが、出発点なのかもしれない。


どうしてここまでできるの??っていうくらいの企画と構想を成し遂げてきた高松さんのエッセンスがわかるお言葉で、講義終了です。


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講義から、考えたコト



人は誰でも、たとえどんなに自分が望むことだとしても「そこまでしてやりたくはない・できない」というボーダーがあると思うんです。そのボーダーは人によって高さが違って、すぐにあきらめちゃう人もいれば、死ぬほど頑張っちゃって危ない人もいる。高松さんはそのボーダーが、とっても高い人なんだろうなーっと素直に吃驚したのがまず。


企画においていかに「構想力」が必要か。前置きよりもはるかにマザマザと見せつけられたのが事例だったね。とんでもない企画を、とんでもない構想力でホントにやっちゃう。彼が長年、いろいろな無理難題の矢面に立たされ続けていただろう”電通の営業”だったことも、構想力を持つにあたってのキーだったのかも知れないと思いました。


普通、営業が言う「通すプレゼン」とは、企画の質を下げたり妥協をすることで、ホンシツとは異なる媚を売ってするプレゼンのことを言います。そりゃ営業は売上がほしいので、変にこだわってプレゼン取れなかったら何にもならないわけだから、まあ仕方がない力学といえるでしょう。でも、高松さんの言っている「通るプレゼン」はそういうことじゃないのね。ホンシツから逃げずに、でも説得する。”通す”ことだけに頭を使いすぎて、企画のクオリティになんら意見できなくなった中堅以上の広告営業の人をたくさん見てきましたけど、通すって、そういうことじゃないんだよね。


それができるかどうかはやっぱり、夢があるかどうか。それも、私的な夢。私的な夢がない人は、平気で捨てられちゃうこだわりを、高松さんは絶対に捨ててない気がする。それはもちろん、「サッカーが好き」「宇宙が好き」というレベルのちょっとしたことから来ている場合もあると思うんだけど、企業理念に共鳴し、あるべき未来を先見し、人より早くそれを実現するために、とんでもないリスクを負って前に進んでこそできたんだと思う。ホントにすごい。

アイデアはひらめいたもん勝ちみたいに自分もどこかで思っていたけど、ひらめいた後、ひらめきで終わらせないためにどんな策が実行できるか。「構想力」の神髄を見た気がします。感謝&焦り。頑張ります。

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次回は、第一期で学科長としてお世話になったクリエイティブディレクターの伊藤直樹氏。この1年でいろいろと動きがあった彼なので、去年とはまた違う話を聞けると期待しております。また書きますカミングスーン!



(文・吉田将英)
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