前回までのログ
東京企画構想学舎 伊藤直樹学科 授業ログ No.01 (伊藤直樹氏)
東京企画構想学舎 伊藤直樹学科 授業ログ No.02 (伊藤直樹氏)
東京企画構想学舎 伊藤直樹学科 授業ログ No.03 (中村拓志氏)
東京企画構想学舎 伊藤直樹学科 授業ログ No.05 (幅允孝氏)
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「企画」に特化した社会人のための学びの場、「東京企画構想学舎」。一期生として参加し多いに学びを得た学科を修了して約半年経ち、第2期が始まりました。(詳しくは上リンクの”授業ログNo.0”を参照) なんと、第一期修了生は”研修生”として、第二期の「企画12人セミナー」に無料で参加できるという神展開。第一期と違い、”学科コース”にいけるかどうかは12人セミナーの内容も踏まえた選抜試験に受かってから、ということで若干趣が違いますが、今期も可能な限り通って、吸収できたらと思ってます♪
「すべてのフィールドに、企画がある」
「すべてのプロセスに、企画がある」
このコンセプトを忘れずに、”企画眼”を持って、では、第一回目。
「すべてのフィールドに、企画がある」
「すべてのプロセスに、企画がある」
このコンセプトを忘れずに、”企画眼”を持って、では、第一回目。
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東京企画構想学舎第二期1回目の講師は、事業家の遠山正道氏。株式会社スマイルズ代表取締役として【Soup Stock Tokyo】【PASS THE BATON】の様々な事業を展開しています。 期間限定の単発イベントや広告のような、短命な企画を手がけるのではなく、”事業”という、長く、多くの人の人生の一部を預かる企てが彼のフィールド。にも関わらず、ともすれば単発イベントの企画人よりも軽やかに、自らの好奇心に純粋な遠山氏の企画マインドは、聞き終わったあとに頭にさわやかな風が吹くような前向きなものでした。
遠山正道 (株式会社スマイルズ代表)
1962年東京生まれ。
三菱商事初の社内ベンチャーとして㈱スマイルズを設立。後にMBOにて100%株式を取得。
Soup Stock Tokyo、ネクタイブランドgiraffe、新しいセレクトリサイクルショップPASS THE BATONの企画・運営を行う。
近著に「成功することを決めた」(新潮社)がある。
HP:http://www.smiles.co.jp/
BLOG:http://toyama.smiles.co.jp/
HP:http://www.smiles.co.jp/
BLOG:http://toyama.smiles.co.jp/
Twitter:http://twitter.com/#!/masatoyama
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”ウズウズ”を形にする
オーバーオールのセットアップで登場した遠山氏。なんでも講義の後、エルメスのパーティに向かうらしく、”おめかし”しているっわけ。後で話してくれたことだが、
というモットーの持ち主の遠山氏らしく。ファッションも、流行り廃れとは全く無縁の遠山ワールドといった感じ。信念やスタイルを自分の中に持てていれば、おのずとそれは”センス”として、全ての行動に反映されるのだという。
慶應義塾大学卒業後、新卒で三菱商事に入社し、情報産業担当を33歳まで勤めた遠山氏。「何か、このままじゃ自分の人生、違う」という違和感を覚え、何かしたくてしょうがないウズウズに身を包まれる。部長がいなくなったらおそらく何も出来なくなるであろう先輩たちと、ご多分に漏れずその中にいる自分。焦りとウズウズはあれど、何をしたらいいのか分からなかった遠山氏の転機は、自身の個展開催だったそう。
平日の朝4時におき、出勤までの時間で書いた。休みもほぼ全て画に費やした。1年間で仕上げた作品数は70作以上。1週間に1作品以上のペースで書きまくった。そして、照明・アートディレクター・編集者などの多くのプロフェッショナルの友人たちの協力によって、本当に実現してしまった。やりたいことに期限を設けることの威力はすごい。
その”おまけ”が、自分の中での「やりたいことへの熱病の芽生え」だった。個展で世話になった人全員に、「みんなの協力に報いるために、成功することに決めた!」と手紙を送り、何で成功するべきなのかの、一人構想が始まる。いろいろと考えていく中でひとつの”渡りに船”が訪れる。ケンタッキーフライドチキンへのIT技術の売り込みの案件だった。
”誰にも頼まれていない仕事”を、やる。
ケンタッキーに出向し企てのチャンスをうかがっていたある日、ふと、「スープを飲んでいる女性」が頭に去来したという。”スープのある一日”。そこから次々と、その女性と、そのスープのある一日が思いついていったという。得意のイラストも駆使し、物語を書き上げ、それをそのまま企画書として書き上げた。
ブランド名、ロゴ、ポスター、店頭イメージまで。何もかも、既に世の中に実在しているかのようなクオリティのデザインまで施して、具体的に書いた。自腹で製本機を買って企画書を製本してまでも絶対に負けたくない上司へのプレゼンを経て、1年半のフィジビリティ検証の後に実現したのが、【Soup Stock Tokyo】だった。
Case1 【Soup Stock Tokyo】
ある女性の”スープのある一日”を思いついたことから生まれた
スープ専門のチェーンレストランブランド。
全てはその女性の人柄から想像し、
全てのアートディレクションに反映していったため、
「食材の色が映えるようにブランドカラーはなし」
「東京中心に10年で50店舗」
「機内食にも展開する(写真右)」など
実現したブランドはほぼ、最初の企画書に書いてある内容どおりだったとのこと。
”サラリーマンとしての企業性”と、
”アートディレクターとしての個人性”の両輪が、
見事に結実した事業企画
スープ専門のチェーンレストランブランド。
全てはその女性の人柄から想像し、
全てのアートディレクションに反映していったため、
「食材の色が映えるようにブランドカラーはなし」
「東京中心に10年で50店舗」
「機内食にも展開する(写真右)」など
実現したブランドはほぼ、最初の企画書に書いてある内容どおりだったとのこと。
”サラリーマンとしての企業性”と、
”アートディレクターとしての個人性”の両輪が、
見事に結実した事業企画
「人に頼まれてもいない仕事をどれくらいやってるか。”Soup Stock Tokyo”はまさに、誰にも頼まれていない、情報部門の自分には全く求められていない仕事。でも、だからこそウキウキしたしわくわくしたし、そういうものが評価されると、メチャクチャにうれしいと思う。」
何か、何でもいいから、自分の手で実現したい。ご自身で”熱病”と評したそのパッションで、職域も立場も全てなぎ倒して進んでいった遠山氏。しばらくしてMBOによってSoup Stock Tokyo事業を買い取って独立。事業主として株式会社スマイルズを設立。サラリーマン時代に幕を閉じる。
経営者としての企画論
Smilesの、五感
1.低投資・高感度
2.誠実
3.作品性
4.主体性
5.賞賛
マーケットの動向にただただ流されるのではなく、自分自身のやりたいことをしっかりと表現し、お客さんにいつもまっすぐに、自分のことを好きでいながら、人から賞賛されるような仕事をしていく。受け売りのかっこいいコトバではなく、社員の中から出てきたコトバを哲学とし、社員も確かに変わったと言う。
もうひとつの遠山氏の経営のモットーとして、「マーケティングをしない」というものがある。世の中を分析しても、誰かのせいにしてしまったり、自分が本当にやりたいことを生み出すことは無理だと彼はいう。
その企画は世の中において上手くいくのかどうかよりも、”自分たちにとってどんな意義があるのか”の方が重要だと遠山氏は断言する。マーケティングをしてリスクヘッジを事前にすることによって気持ちや熱意が数字に寄りかかってしまうくらいなら、やりたいことを自分の責任において創っていく。そのプロダクトアウトの姿勢の中からでしか、本当にやりたいことは生まれないのだと。成長はやりながら、失敗しながらでいいのだと。
また、”リスク”に対しても独特の感覚を持っている遠山氏。事業をやる上でのリスクは”考えたことがない”という。
「その上で、リスクって、美意識がないことだと思う。つまり行き先が見えてないこと。自分のやりたいことと、社会に対してやるべきこと。この二つが重なっていることならば、きっといけます。もっとも悲劇的な仕事は、”やりたくない”し、”やるべきでない”ことをやって、しかも儲からないこと。楽しくないですよね。その反対側にいければ、リスクなんて考えなくていいんです」
あくまでも自分がやりたいことを、ひたすらにやっていく。底抜けの推進力で、彼はSoup Stock Tokyo以外にも次々と新事業を立ち上げていく。
ネクタイブランド。
キリンのように首をしゃんと伸ばし、世の中を俯瞰で見通すような
毅然としてビジネススタイルを彩りたいというコンセプトからネーミング。
キリンのように首をしゃんと伸ばし、世の中を俯瞰で見通すような
毅然としてビジネススタイルを彩りたいというコンセプトからネーミング。
Case3 【PASS THE BATON】
新しい形のリサイクルブランド。
ただ単にリサイクルで再販するのではなく、
以前そのものを使っていた人の思いまでも受け継いでいこうというコンセプト。
世界中の良いモノが集まってくる東京から、
世界中に良いモノがふさわしい人に拡散していくような、
地球儀の赤い点が薄いピンクになって
地球全体に広がっていくイメージから
事業着想したという。
現在、遠山氏がもっとも”自分でやりたくなっちゃってる”事業。
経営者として全てのことを自分で抱え込むのではなく、可能な限り、他の社員に振りながら進めていくのが遠山流。各所で各社員が自分が理想とする仕事を、自分のやりたいようにやっていく、そのためには必要以上に手を下さずに、大きな方向性だけ示すのが経営者だと彼は言う。
「人のせいとか、世の中のせいにしても何もいいことなんかない。それに、ダメなこと・ダメな理由なんて探せばいくらでも出てくる。そんなことより、なにがやりたいのか、どうやってやれるか。ポジティブな理由をたくさん引っ張り出して、あんまり”夢”とか大層なものだと思いすぎずに、どんどんやってみて、どんどん勉強して、ちょっとずつ進んでいけばいいと思う。”楽しいじゃん”とか”あの人喜びそうじゃん”とか、そういう原理で仕事がしたいですね」
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講義から、考えたコト
その奇抜な見た目と熱病ともいえるパッションから、彼は人とは違う、いわゆる”天才”なのでは何かと最初は思った。でも、天才とはきっと、「天からギフトを受け取った人間」なのではなく、「人とは違う自分のやりたいことを、ものすごい深さで信じてあげられること」のことをいうのかも知れない。変人といわれようが、周りにとめられようが、ただただ自分の思いを信じる。よく考えてみると天才と呼ばれる人は、誰もやろうとしなかったことに立ち向かえる、とてつもない”自信”の持ち主なんだと、遠山氏の話を聞いていて感じる。”自信”とは実力を過信することではなく、”自”分のやりたいことを”信”じるという意味でね。
イラストや個展、ペルソナ法から企画のデザインを形作っていく彼のアートディレクション的なアプローチはおそらく、商社マンとしては異端だったと推測される。それでも、自分が”いい!”と思うことをとことん信じ、それを一番、自分が魅力的に伝えられると思える手段で伝え形作る。彼の”天からの才”を、環境や他者に惑わされることなく、突き進んで実現していく。
要するに遠山氏は、「やりたいことをやってるだけの人」なんだと思う。平易に聞こえるかも知れないがこれがいかに大変なことか、いかに勇気のいることか。
ただ同時に、「やりたいことはいきなりそんなに明確じゃなくてもいい」というメッセージも、彼の人生の顛末から感じた。”なんだか分からないけど、何かやりたい、何か成し遂げたくてウズウズしている”…… そんな状態を大事にしてほしいし、そこから何でもいいか一歩、行動をしてほしいと遠山氏は言う。商社マンだった彼が現業と何の関係もなく、ただやりたかったからやった絵画個展。そこから彼のやりたいこと人生が始まったことを考えると、そのときの行動に神様がつけた”熱病”というおまけは、とてつもなく大きな意味を持ったおまけだったのではないか。
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次回の授業は、ブックディレクターの幅允孝氏。第一期には伊藤直樹学科の講師としてみっちり企画術を教えてくれた幅氏ですが、今回はどんな話をしてくれるのか。いまから楽しみです。出席できるかどうかがヒジョーに怪しいのですが、出席できたらまたアップします。っていうか第一期の授業もアップしなくては… 頑張って書くので、何かの参考になったら幸いです。【いいね!】【ツイート】あとコメントもお待ちしております!
(文・吉田将英)
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