2011/06/06

東京企画構想学舎 伊藤直樹学科 授業ログ No.04 河尻亨一氏 (2010/11/08)

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東京企画構想学舎ログの第4回目。この学舎では【10人セミナー】【学科授業】に加えて【グループワーク】を、授業と並行して進めていきます。最終講ではの発表を当面の目標とし、さらには、「実際に世の中に価値として具体化する」ことが最終目標。実在する企業や団体などに売り込みに行くことを真剣に念頭におきながらも企画を詰めていくことこそ、この学舎が単なる「お勉強セミナー」とは違い、実学に理念をおいているということを体現しているってわけです。今回はそのグループワークのキックオフの回。当学科を「担任」という形でプロデュースしてくださっているキュレーターの河尻亨一による、「企画の作り方・進め方」のレクチャーでございます。

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 河尻亨一氏 (キュレーター)
銀河ライター主宰(元「広告批評」編集長)/HAKUHODO DESIGN(キュレーター)
2000年「広告批評」に参加。これまで企画・取材を手がけたおもな特集に、
「エコ・クリエイティブ」「歌のコトバ」「箭内道彦 風とロック&広告」「Web広告10年」「ワイデン+ケネディ」
「FASHION COMMUNICATION」「テレビのこれから」「オバマの広告力」などがある。
書籍編集・寄稿/連載・インタビュー・イベントプロデュースなど、
「編集・キュレーション」を軸足に幅広いジャンルで活躍中。
東北芸術工科大学客員教授も勤めている。


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【流行る企画】とは?

いい企画とはどんなものか? それを考える上でまず、「今年、世の中で流行っているもの・これは新しいと思ったもの」をたくさん書き出してみることから授業はスタート。ジャンルや商品・サービスの種類は問わずに、生徒のみんなで自由に発言して、書き出していったわけです。

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【出てきたもの】 10/11/08 時点
おねがいランキング・悪人・もしドラ・K-POP
Akinator・龍馬・TGC・池上彰・自転車・AKB48・Ustream
ニーチェ・ONE PIECE・グルーポン・ラー油・ラブプラス
女子会・歴女・ギャル/ギャルママ・スカイツリー ・・・
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一例ですが、このような感じ。僕含め生徒の皆さんも、「マーケター」「SE」「クリエイター」「事務」「営業」「人事」などなど、様々な業界の様々な職域を担っている人が混ざっているので、それによって流行っているものとして挙げられるものもまったく違ってそこも面白い。【イベント系】【書籍】【広告キャンペーン】【商品】【サービス】【Web・アプリ】【ボランティア・援助】などなど・・・ そこから見えてくる個人個人の興味関心分野・アンテナの方向性を見定めながら、うまく散らばってシナジーするように配慮し、チームを決めました。人数構成としては、6人チームが4つという形。


企画する上での考え方

この学科のグループワークのテーマは、「企画」ということのみ。学科側から、特定クライアントをイメージせよとか、商品・商材はこれで!とか、そういった指示は特になし。「しっかりと世の中に具体化することまで念頭に置いた、確かに価値を帯びた企画」であれば基本的には何でもOKっていうことです。ただ、それだといくら何でも広すぎて取っ掛かりが持てないということで、河尻さんから企画を見るうえでのポイントが挙げられました。

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企画を評価するうえでの5つのポイント
【なんらかの解決を提供するもの】
【インサイトがそこにある。かつシンプルな企画】
【なんらかの体験を促すもの】
【うわさになるような面白さを帯びたもの】
【実現できそうな目処が立つもの】
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この5つのポイントは伊藤直樹氏や中村拓志氏のこれまでの授業からも見えてきたポイントだし、これから登場する千房けん輔氏や野村友里氏、幅允孝氏にも共通するエッセンスだろうと河尻さん。加えて、伊藤直樹さんが企画する上でもっとも大切にしているであろう視座を、伊藤直樹学科ということでひとつの条件に挙げました。

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【なんらかの空間・場所を設定し、そこでの体験・身体性を企画に盛り込む】
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文化国境を越えて人間に共通する、「身体」と、そこから立ち上がる、「感情」に着目することで、伊藤さんの志向する、「みんながイイね!という強い企画」を考えるヒントが得られるだろうということ。身体を介して強い感情を見る人触れる人に呼び起こすことによって、現状の世の中にある課題や問題点を、今よりちょっとでも良い方向に持っていくような、そんな企画を考えていくことになりました。

その上で、冒頭に書き出した、「今年流行っているもの」を河尻さんが簡易ながら象限分けしました。軸は2つで、【デジタル⇔トラディショナル/アナログ】 【コンテンツ⇔体験】 この分けでいったときの、今回この学科で考えて見てほしいのは、【トラディショナル/アナログ×体験】ということになります。デジタルが隆盛を極める今の時代だからこそ、まだ着目されていない人間の身体に基づいた体験価値。それをある場を設定して立ち上がらせるということですね。

何から考える?

では、何から決めていけばいいのか?クライアントからオファーがある場合と異なり、今回はゼロからの企画。何かきっかけを自分の中から考えないといけないわけです。ここで大事にしてほしいというのが、「個人が日ごろから思っている・抱いている”理念・信念”」というわけ。「もっとこうすればいいのに!」「自分だったらこれをこうする」「何でこうなっちゃうのかなこれ・・・」などなど、日ごろの自分が何気なく感じ取っている、怒りや不満、あるいは改善のアイデアなどなど。それを実際に【企画】と呼べる域まで昇華してみるのが、一番熱量の高い企画の発想につながるのではないかと。

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メンバーから出てきた「問題意識」の一例
【食物廃棄世界一の国、日本】
【デジタルディバイドにはじまる、知識格差】
【限界集落】
【日本の就活/就労は不自由だ】
【英語教育はなぜうまくいかない?】
【ショービズが高価すぎる国、日本】
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その上で、【売り先はどこなのか?】【企画内容はどんなものなのか?】【本当に自分たちのチームの力で解決まで導けそうか?】などを考えていく流れになったわけです。まずは、【世の中に眠っている課題・問題】に気づくこと。それを採集していくことがメンバー各自の宿題となったところで、この回は終了しました。


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講義から、考えたコト

今回はあくまでも【グループワーク】の回だったので、講義からというものはないのですが、改めて実感したのは、「みんなが共感するポイントを探ることの難しさ・重要性」ですね。年齢も性別も異なるメンバーが、共通の問題意識を心の底から共有し、みんなでその問題にトライする。それには、説得や知識の共有も必要になってきますが、何より「探すこと」が重要なのかなと思います。普遍的に、広くあまねくみんなが関心を持っているフィールドやトピックを、今まで誰もトライしたことのない視座・方向性のアイデアで解決へと導く。そのためには、「探す」ことが何より重要。メンバー間の対話・相互理解はもちろんのこと、世間のセンサーがどちらを向いているのかをつかむ肌感覚が、企画のテーマを決めるすべてになるんだろうと、痛感した初回グループワークでした。

よくよく考えれば、世の中の多くの人の意識や態度・行動を動かす影響力の大きい企画というのは、それを絶対にはずしていないんですよね。そのセンサーを立てることからはじめよう、というのが河尻さんの裏の狙いだったんじゃないかなと今は思います。

いかに日常生活で、「気づける」か。ここから約4ヶ月間の、「気づきフェチ」生活が始まったわけです。

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次回、第5回はブックディレクターの幅允孝氏のレクチャーでございます。「本」という対象に対する”偏愛”の強さと、その思いが企画にどんなポジティブインパクトを及ぼすのか。具体的な事例をふんだんに交えての授業になりました。近々アップいたします。。。

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