2011/09/09

SPBS 作家・ライター養成塾 夏期集中講座 授業ログ vol.3

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前回までのログ
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SPBS作家・ライター養成塾 夏期集中講座
SHIBUYA PUBLISHING BOOKSELLERS主催の添削通信講座、
「SPBS作家・ライター養成講座」の夏期講習版ということで、
計4回の授業に文章で生きて行くうえで必要なノウハウを
ぐっと凝縮した、夏期のちょっとした集中講座です。


SPBS作家・ライター講座の第3回目。第1回と2回は基礎講義・実習ということで”伝わる文章”とはなにか、基本的な部分を添削を通じて大いに学んだわけです(詳しくは上記リンクから過去ログ参照)。今回と第4回では応用講義・実習として、「メディアにあわせた伝え方」のレクチャーを受けることになります。広告屋さんとしては、「まあそれ当たり前でしょ!」とか思って挑んだわけですが、分かっているのと実践するのは全くの別物。ライターさんのすごさを思い知った内容になったとさ… 

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SPBS作家・ライター養成塾 夏期集中講座 その3 (9/5)


 -今回の先生方-

 阿久根佐和子/あくね・さわこ
鹿児島県生まれ。東京大学文学部英語英米文学科卒業。
『BRUTUS』『Casa BRUTUS』『GQ』『coyote』などの雑誌に執筆するほか、
英語文学の翻訳や、荒木経惟『いい顔してる人』など
書籍構成等も手がける。




河尻亨一/かわじり・こういち
銀河ライター主宰。元『広告批評』編集長。
現在は雑誌『リバティーンズ』や日経トレンディネット『This Is Hit!』等の連載などのほか、
書籍編集、イベント企画、広告など幅広く手がける。




メディアって何?

そもそもメディアって何?河尻さんのこの問いからセミナーはスタート。いろんな定義があっていいと思いますが、河尻さんは『コンテンツの器』という風に定義した。そして、コンテンツを載せることさえできれば何だってメディアであるとも。TV、雑誌のような広告ベースの考え方だけでなく、マンホールだってTシャツだって空だって、なんだってメディアになりうるわけ。いわゆる”メディア・ニュートラル”という考え方ってこういうこと。そして、


「メディアには必ず、特性(たたずまい)があり、その特性を知った上でコンテンツを作らないといけない」


と、とっても重要なことにも触れた。ライターにとってのコンテンツとは当然、文章であり、その文章が載るメディアがどのようなたたずまいを持っているのかを無視しては、機能する文章は書けないということになる。というわけで今回の講義のミッションは、


「メディアニュートラルな書き手になって、機能する文章を書こう!」


ってわけです。

その上で、どのメディアを想定して訓練していったら分かりやすいか。挙げられたのは「雑誌」。雑誌はターゲットメディアであり、そのパッケージが提供している情報や世界観に共感するファンだけが読むもの。その世界観を見抜き、乗りこなすことさえ出来れば、そこから先は自分の文章の技を自由に発揮して書くことが出来るというわけ。かつ、有料メディアなのでお金にも直結している。まずは雑誌のライティングを想定した訓練を通じて、各メディアの持つ特性を見抜く力をつけていきましょうって寸法です。

日本の雑誌出版点数は総計で3,500点にも及ぶ。それぞれどんなターゲットを狙って構成されているのか、同じジャンルの雑誌をとっても全く違うので、それを見ているだけで見えてくることもあるわけです。


”ライフスタイル誌”とひとくくりにしても、
これだけの幅があるわけで。
東京カレンダーにおける『よい文章』は当然、
そのままの形でananに載せても『よい文章』として機能しないわけ。
それぞれの雑誌の”たたずまい”とは、こういうこと。
誰がどんな気分を求めてそのメディアに接するのか。
よくよく考えて書かないと伝わらない。

たとえばある映画監督にインタビューをするとしても、『cut』ならおそらく、作品のクリエイティヴィティについて聴いた記事になるだろうし、かたや『日経ビジネス』なら、巨額の撮影費をどうやって調達したかを聴く記事になるかもしれない。同じ素材でもメディアのたたずまいによってアングルが全くことなるわけで、そこを把握してないと勝負の土俵にも上がれないという。

まとめると、雑誌に文章を書くときは、

① その雑誌のターゲットを知る
② その雑誌のスタンスを知る
 ↓
そのためには、『表紙』と『過去特集』を徹底チェックするべし!

自分が得意とするたたずまいの雑誌の仕事ばかりくるわけでもないし、駆け出しのころは仕事なんて選んでらんない。意地でも来た話に食らいついて、自分の中にはないいろいろな色をイタコのように憑依させて、書きまくるしかないんでしょうね。



オーダーをもらったら

んで。実際にオーダーをもらったらまず、解釈をすることからはじめようと。メディアの特性、編集者の人柄、ギャラ、締め切りなどなど… 編集者視点を自分でも持った上で、いきなり書くのではなく、企画者の目線を持つところから始めるべきと河尻さんは言う。


「誰が書いても一緒の原稿なら、書かない!」


くらいのポリシーを持って、変なこと・変わったアングルを見つけ出すまで悩みつくす。それは要するに文章の巧拙とは別の、企画脳・編集脳を持っているかということになるんでしょう。それに「いいから黙って、こんな感じで書いて」と押し着せられるより、自分で企画から考えるスタンスがベースにあったほうが、結果的に書きたいことに手繰り寄せられることが多いとのこと。それはどんな仕事でも共通していることなのかもしれないですね。





現場をみよう

次のステップは大事な大事な「取材」。本当にそこに行ったのか。食べたのか。触ったのか。見たのか。話を聴いたのか。少しでも調べたのか… それらの取材がいい形で行われたのかどうかは、文章を読めば一発でわかってしまうと河尻さんは言う。基本的には、題材に関する取材をしないと文章とは書けないものだと思ったほうがいいとのこと。ヒントは現場にある。

取材というと、なんとなく対人的なインタビューのみを思い浮かべる人が多いのかも知れないけれど、”オーダーされた原稿に関わる全ての事柄”は取材になるわけです。リンゴについて雑文を書くにしても、机の上でなんとなく想像して書いた文章と、スーパーに行ってとりあえずリンゴ持ってみてから書いた文章では、熱量が明らかに違うと。なので、大層な取材はできなくとも、必ず現場に行こくべきってわけ。

カラダをちゃんと使う。自分のカラダを通して出てきたものでないと、絶対にはまらないと、阿久根さんも続く。その上で、他人のことを自分のカラダに通すための作業が、「インタビュー」。二人が考えるインタビューの掟を下に紹介します。

・聞き手になろう。引き出そう。同化・ファン化。好きになっちゃう。
・ミッションは頭に入っているか。
・同じことを、いろんなアングルから聴いてみる。
・分からないことは、分からないと言おう。
・話の3割は、無駄でいい。
・インタビューがおしゃべりになるのは、いい傾向
・終了後においしい話をする人、多し。
・切り返しつつ、構成する。
・飛躍させてあげる。決め付けない。
・インタビュー中は誰もが役者


何より大事なのは、一番最初の「聞き手になる」こと。「相手のことを好きになれるかどうかが最大のポイント」だと二人は口をそろえる。人は、自分のことを好いてくれる人に、より自分の深いところを見せてくれる。これは人として当然の心理。苦手なタイプの人とぶつかるときももちろんあるけれど、そこをどう愛せるか。ココロの広さもライターの技量のうちってことなのかも知れないですね。




さて、どう書くか

これら全てのステップを経て、ようやく『書き』に入る。これまでのお膳立てがどれだけ上手く行ってるかである程度の勝負は決してしまうわけだけど、もちろん書く作業にだって巧拙・良い悪いはあるわけで。たとえばレストランに例えてみると、ライティングのポイントは…

1.タイトル … メニュー。ちゃんとおいしそうか?シズルが出てるか?
2.アングルとロジック … 素材の整理・手順。発見はあるか。
3.ディテール … スパイス、隠し味、自分らしさ
4.盛り付け … レイアウト、デザインにも理解をしてこそ一人前のライター。

の4点。

【3】については、要するに”自分らしい文体”をどんな形で活かすのかということになる。多くのライターは何らかの自分なりの『技』を持っているとのことで、たとえば河尻さんの場合はそれは『見立て・比喩』だし、阿久根さんは『平易であること・分かりやすさ』だと言う。これはもう、ひたすらに数をこなしていくうちに見つけるものだと思うので、頑張ります笑





何のために書くか

最後に二人が話してくれたのが、この話。『頼み手=編集者』と『読み手=読者』と『書き手=ライター・自分』の三人が、お互いに幸せな形になれているのか。とても難しいお題だし、往々にしてこの三角形のどこかに歪が出てしまうという。ライターとして出来ることは常に、「編集者の目線」を持つことと、メディアのたたずまい=読者がそのメディアに期待することを意識しつつ、そこに『自分が書きたいこと・エゴ』をどうラダーさせていくかってことになるのだと思う。

『書く』ということは、超孤独な作業で、誰も助けてくれない。
しんどいし、楽しくないし、終わらないし、行き詰るし。
でも、誰かがそれを読んで、面白かったと言ってくれるだけで、
報われるし、また書こうと思えるのが、ライターというお仕事。

そんな阿久根さんの最後の言葉が印象的。クラフトするという行為の最小単位は、やっぱり一人の孤独な戦いなんでしょうね。チームプレイではあれど、そのチームの一人一人が、”孤独”と戦える集団じゃないと、チームワークはワークしないんだと思った言葉でした。そんな第三回の講義。

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お二人ともすんごい盛り上がって、ライターという仕事の内面の”あるある話”を、ここには書ききれないくらいたくさんしてくれました。断片的にご紹介しても良かったのですが、それはヒミツってことにしておきましょう笑 ただ、「クリエイトする」という作業において、喜びも苦しみも方法論も、向いている方向は極めて似ているのではないかと思ったし、だからこそ”プロデューサー”という職業が成り立つのかもしれないなあなんて思いました。

伝える相手のことを慮ること
場を知り尽くし、操ること
味方を、真の味方にすること
アイデアを考え付くし、自分にしか出来ないものを生み出すこと
ちゃんと、形にするところまで手をくだすこと


この講義を通じて、これまで自分なりに整理してきた「企画する」ということのエッセンスは、間違った方向ではない!と自信を持つことが出来たと同時に、上ろうとしている山の高さも思い知りました。




で、今回も課題が出ました。


課題:雑誌記事を書いてみる
実際に販売されている雑誌(バックナンバー含む)の中からひとつ特集を選び、
自分なりにテーマを考えて記事を書いてみましょう。


これです。たたずまいを見抜く・オーダーを解釈する・取材をする・ライティングをするという、全ての作業がこの課題の中にはいっているという、さらっとしているように見えて、超難題が着ちゃったわけです。これを高次でコンスタントに実現し続けるのがライター業ということですね。


次回、第4回のログではこの課題の血祭り添削結果をまたお見せできたらと思いますので乞うご期待!


(文・吉田将英)

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