2011/11/08

「未来を創ることは、夢を創ること」:東京企画構想学舎 第2期 企画12人セミナー No.7 【高松聡氏】その1

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第1期 伊藤学科のログはこちら(途中ですw)

1期・前回までのログ
  
東京企画構想学舎第二期7回目(欠席してしまって間が抜けちゃってますが、後日書きます)。クリエイティブディレクターの高松聡氏のセミナーです。電通で営業を長く経験されてからクリエイティブディレクターに転身。多くのビッグキャンペーンを実現されてきったビッグネームです。企画の実現のためには時にはそのための会社を設立したり、ビジネスモデルから立案されるなど、手段や型に一切はまらない企画スタイルの秘密はどこにあるのか。企画の信念を事例紹介を通じてお話してもらいました。前半はまず、企画に対する向き合い方について。

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 高松聡 (クリエイティブディレクター)
1963年生まれ。電通に入社後、営業局を経てクリエーティブ局に転局。
2005年にクリエイティブ・エージェンシーgroundを設立。
主な仕事に、日清カップヌードル「NO BORDER」・「FREEDOM」、NTTレゾナント「教えて!goo」、
アディダス「日本代表キャンペーン」「読売巨人軍」、オリンパス「Eシリーズ」「PEN」、
KDDI 「iida」「What's android au?」、UNIQLO「ヒートテック」「UJ」「UT」など。
朝日広告賞、TCC賞、TIAAゴールドなどに加え、カンヌ国際広告祭金賞、クリオ賞グランプリ、
アドフェストグランプリ、ロンドン国際広告祭金賞、NYADC金賞など海外広告賞も多数受賞。
国内外広告賞で審査員も勤める。世界初となる宇宙ステーションでのCM撮影成功後、
恒常的な宇宙での撮影インフラ確立を目指し、(株)SPACE FILMSを設立。
2011年には宇宙旅行会社(株)SPACE TRAVELを設立、代表取締役を務める。
近年は、企業戦略、ビジネスモデルや、商品企画のコンサルティング活動も増えている。
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企画1年・構想9年
 
この講座のタイトルにもなっている【企画】【構想】について、高松さんは自分の言葉で改めて定義付をするところから話し始めます。まずは、お約束ですが辞書を引いてみるところから。

【企画】
あることを行うために計画を立てること。
また、その計画。企て


【構想】
これからしようとする物事について
その内容・規模・実現方法などを考えて、
骨組みをまとめること

高松さんは特に、【構想】に注目します。結局、どんなに立派な企画があっても構想なくして世の中に存在することは不可能ってわけです。かつ、多くの「世界初」の企画は、「思いつかなかったこと」」よりも「思いついてはいたけど誰もできなかったこと」であるとも整理します。企画を考え、その実現方法を考えて、実際に実現する。そこまでひとつながりで遂行してこそ、企画のプロフェッショナルと言えるのだと高松さんは言います。彼は、企画と構想の関係性について、一つの例を紹介してくれました。


1960年
企画発足

1961年
企画(プログラム)発表

1969年
企画実現

宇宙マニアとしても有名な高松さんが出したこの年表は、アメリカのアポロ計画の【企画・構想】の年月を簡単にプロットしたものです。この例では、企画には1年かかっていますが、その後の構想には9年かかっているわけです。「思いつくこと」よりも「思いつきを実際に実現させる」ことの方が、世の中の多くの、特にイノベーティブなアイデアにとっては大変な作業なのかも知れないですね。


そんなアポロ計画。1961年の企画発表に至るまでで最もプログラムに反対した人物が、実はケネディ大統領でした。実現可能性について極めて懐疑的な態度だったケネディは最後まで反対しつづけていたようですが、いざアポロ計画発表の演説は、伝説になるくらいの素晴らしいものになるわけです。


First, I believe that this nation should commit itself to achieving the goal, 
before this decade is out, of landing a man on the Moon 
and returning him safely to the Earth. 
No single space project in this period will be more impressive to mankind, 
or more important in the long-range exploration of space; 
and none will be so difficult or expensive to accomplish.

まず私は、今後10年以内に人間を月に着陸させ、安全に地球に帰還させるという目標の達成に
我が国民が取り組むべきと確信しています。
この期間のこの宇宙プロジェクト以上に、より強い印象を人類に残すものは存在せず、
長きにわたる宇宙探査史においてより重要となるものも存在しないことでしょう。
そして、このプロジェクト以上に完遂に困難を伴い費用を要するものもないでしょう。


宇宙計画に対して賛否両論だったアメリカ国民たちは、この演説で一気に賛同します。米国全体に夢を持たせ、お金を使うことを許させ、かつ大変困難なチャレンジであることもちゃんと同時にエクスキューズしているこの演説。高松さんにとって屈指にプレゼンテーションとして記憶に残っているとのことです。

「大きな企画を推進するには、そこに大きな”夢”があることを、お金を持っている人・影響力がある人・決定権を持っている人に伝えないといけない。アポロ計画の場合、その規模・資金源・難易度・タイムスパンのすべての面から、その相手が”米国民全員”だった。彼らに大きな夢を与えられるのは、ケネディだけだった。


困難であり、予測不可能な部分があり、お金がかかること。その向こうにしか、新しいことは存在しえないんでしょうね。そんなリスキーなことに賛同してもらうためにはやっぱり、「夢」を共有することも、構想力のうちだと高松さんは言います。

「企画とは、未来を創ること。今はない何かをつくること。ほんの少し、未来を見つけること。この先何が起こるのかを、人よりちょっと先に見つけて、見せてあげることだと思う。それに協力してもらうには、夢を見せてあげることが最も重要。


それと併せて高松さんが強調したことが、企画構想の新規性についてのこと。多くの人は素晴らしい企画にはすべからず、「誰も思いつかないようなひらめき・アイデア」があると思っているはずですが、高松さんの考え方はちと違う。

「誰も思いつかないことを発想しないといけないわけじゃないんですよ。いい企画とは、”いつか誰かが思いつき実現することを、自分の手で初めて実現すること”だと思います。


「人が欲しい、面白い、驚く、感動することをみんなが知っているところに加えて”もうひとつ”見つけること。それも、人より早く見つけることがポイント。”早さ”は価値になります。」


”独創性の檻”にとらわれて身動きがとれなくなることは自分もとっても陥りやすい状態なのでこの言葉には救われました。ただ、”じゃあなんでみんなが思いつきそうなのに、誰も実現できていないのか”をよく考えると、そこにはやっぱりアイデアが足りないんですよね… 伊藤直樹さんの授業でもアイデアには、「アイデア」と「アイデアを実現するアイデア」が両輪必要だという一言があったと思うけど、たとえ前者がありふれていても後者が飛び抜けていれば、それが早さを伴ったとき世の中をかえられるのかも知れないですね。


説得する・わかってもらう
 
アポロ計画におけるケネディの演説の役割は前述した通り。企画には、特に新しい企画には必ず、気乗りしない人が存在します。もうこれは間違いないといってもいい。そして、その企画の成功のためにはその人の力が必要だったりしちゃうんですね。企画構想力の中で高松さんが特に重要視するのが、そのような人をも仲間にしてしまう、「見つけたことを説得する力」なんです。

「自分のアイデアに自信があると、そのアイデアに対して不安を持つ人の気持ちがわからないことが往々にしてある。それでは絶対に説得できない。やりたくない人を説得するには、その人がなぜやりたくないのか、”やりたくない人の心”がわかってないと。」


やりたくない人の気持ちを最大限慮った上で、やはりここでもケネディの演説と同じ、「夢」を共有することがポイントになると高松さんはいいます。時代の転換点を敏感に感じること。それを他の人よりもちょっと早くキャッチして、その先の未来を人に見せることが大切とのこと。
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講義から、考えたコト

柔和なでウィットに富んだ話し方がとっても心地いい高松さん。でも話の内容が帯びていた企画に対する熱量は凄まじかったように思います。
何より強調されていたのが、「実現すること」の重要性と難しさ。頭がいい人に多いのが企画だけして終わってしまうことだと思うんだけど、本当に人間としての総合企画力・行動力が問われるのはその後なんですよね。クライアントにつぶされるとか、予算がはまらないとか、費用対効果が悪いとか。ビジネスでやる以上、制約はつきものなのですが、新しいことにも制約はつきものなわけで、そこを乗り越える熱意が、半端じゃなかった。そこにはきっと、世の中の夢や社会の夢、クライアントの夢を見据えて、そこを共有するための努力ならなんでも出来るという高松さんの企画者としての魂があるんだろうなあ。


個人的に目鱗だったのは、「誰でも思いつきそうなことを、いち早くやること」の重要性のこと。世界の人が普遍的に求めていることって、結構シンプルなことで、ただそれが言葉にされてないだけだったりする。それにいち早く気づくこと、そしてそれを解決できる具体的な形を創ること。これってとっても高い行動力を要するんだろう。


航海から帰ってきたコロンブスが貴賓館に招かれて知恵比べをしたというのが有名な「コロンブスの卵」の話。多くの人はコロンブスが卵の底を割ってたてたところまでしかその話を知らないと思います。この話には続きがあるんですよん。底を割って卵をたてたコロンブスに向かってある貴族は、「なんだそんなことか!それなら俺だってやろうと思ったさ!」と吐き捨てた。それに対してコロンブスは、「そうやって一生、この館で言っていればいいさ」と言い返したそうです。


知識としてアメリカ大陸を語る人と、実際に自分の目でそれを誰よりも先に発見した人の、大きな差。卵の謎掛け一つとってもそこには人間としての歴然たる差があったのでしたっていうのが、このエピソードが本当に伝えたいことだと勝手に思っているのだけど、おんなじことなんだろうね。考えているだけど、実際やることの、差。企画も、それだけでは意味はなく、本当に世の中に”夢”を形にして見せてあげるためには、「構想力」が必須というわけです。

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後半は、そんな高松さんの企画構想力が抜群に発揮された事例を紹介しながら、実際に何をどのように考えながら世の中にそれを立ち上げたのかをご紹介します。多分カミングスーン!



(文・吉田将英)

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