2013/07/08

Andreas Gursky展に行ってきて

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こないだの週末、一瞬暇が出来たので、かねてより行こうと思っていた「Andreas Gursky展」に行ってまいりました。@国立新美術館  グルスキーの作品をはじめて知ったのは2年前の3/10。本トークというイベント(詳しくはこちら⇒旧ブログ)で、伊藤直樹さんがグルスキーの写真集を、マイベスト5な本の一冊として紹介していたことで知ったんです。その時は主に、例の有名な「RhineⅡ」についてのお話だったんだけど、是非一度、直に原寸でその視覚を体験したいと思い続けておりました。

アンドレアス・グルスキーがどんな人かの説明は、前書いたこのポストに丸投げするとして笑、特に感じ入った作品を、まあウェブ画像で見せても全く全然なんにも伝わらないし、これで観た気になってもらうのはこちらも心外っちゃあ心外なのだけど笑、載せながらレビュー。


[99 Cent] 1999


ロサンゼルスのディスカウントショップで。
無機質で規則的な水平構図に埋め尽くされた消費財の山と、
その間に散見される人の頭。
雑然としながらも個々の商品をはっきり視認できる。
スティッチング技法を使い、
現実よりも現実味のある、少し怖い画を切り出した作品。
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[Nha Trang] 2004

タイトルのニャチャンとは、リゾートエリアとして有名なベトナムの海沿いの都市。
対外的には風光明美なその土地をタイトルに、
均質化されたカゴ編み工場の俯瞰を切り出した作品。
フラクタルな図形のような、反復が、
彼女たちの日常なんだと思うとちょっと怖い反面、
人間社会なんて俯瞰でみればこんなもんなんだろうなっていう、
諦念のようなものもちょっと感じる作品。
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視覚って実は人間の五感の中で一番、信用ならない、だましやすい感覚であって、我々は都合よく脳内で補正をかけながら、人生の断片断片を画として覚えているわけです。グルスキーさんは、そんな我々の「脳的にはこういう風に見えているつもりになっている」画を、写真をいじくって加工することによって、目の前に実際の画として立ちおこしているわけで、なので一見するだけでは、「これの何がそんなにすごいっていわれるのよ?」「写真っていうより、被写体がスペシャルなんじゃないの?」っていう感想になると思うんです。だけど、まあこれは実寸大で実際に微視しないと中々気づけない感覚なんだけど、よく見れば見るほど、何かがおかしい。焦点の当たり方や、視野角の広がり方、見ている本人と被写体の相対関係… 絶対にこうは見えてないはずなんです、本当の人間の目からは。これは【実際に見える景色】ではなくて、【脳的にはこうである】の画なんだと、原寸で見るとふっと気づいて、それがまあ、何とも言えない感覚で、素晴らしかった。でも多分、【脳的にはこうである】は、要するに実際にはこう見えている、であるので、突っ込んだ言い方をしてしまえば、「人間の目では、本当の意味での真実はどうやっても切り出せない」のかもしれないけど。



[Paris, Montparnasse] 1993

パリ・モンパルナス地区にあるアパルトマンの写真。
スティッチング技法で加工されたこの写真には、
パースペクティブがなく、どの壁面に対しても等しく正面から向き合っているような、
不思議な感覚にさいなまれる作品。
(ビルのエントランス通路にはパースペクティブがあるように見える)
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以前、チームラボの猪子寿之氏のセミナー(⇒このポスト)で触れられていた、「パースペクティブ(遠近法)の有無」についての文化依存度考察を思いだしたりしました。西洋絵画や西洋的な視界の定義・捉え方としてのパースペクティブは日本でももう当たり前になっていて、空間を捉えた時、どこかで1点の焦点に集約される形で奥行きを持って世界は捉えられがちなわけです。それに対して日本画は、パースペクティブが存在せず、全ての事物・事柄を全て真正面から捉えたような、焦点の定まらない空間処理をしてきたわけです。マリオのワールドマップや、初期のドラクエのマップなんかも完全にそうだと。

グルスキーさんは、パースペクティブを、写真をいじくることでぶっ飛ばして、「あるようでない風景」を作っているわけだけど、これもまたやっぱり、言われてみないとふとすれば分からないような世界なんだなと。猪子さんも言ってましたけど、「目に映るものは絶対で皆同じだと思いがちだけど、視界ですら、視界こそ、文化依存度が高い。”どう見えているか”は、”どう見てきたか”で決まる」っていうことを、この写真を通じて観る者に、ぬるりと突きつけてきている気がして、こういう物の捉え方が好きだなと思うわけです。

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やはり思うのは、「見えているもの」の不確かさ・曖昧さ。そこにはいろいろな歪やギャップが存在していて、まだまだ沢山、【まだ知らない体験価値】が山ほど眠っていると思うわけです。そういう意味で、とっても示唆に富む展示で、行ってよかった。やっぱり実寸で観ないと、体感は出来ないですよ。PCの画面も【視界を構成する要素】として目に指し挟まっているわけで、それと、壁面に掲げられた作品を直に観るのは違うわけだから。9月中旬までやっている展示なので、お暇なときに是非見てみることをオススメいたします。



[Kamiokande] 2007

岐阜県にあるニュートリノ検出装置「スーパーカミオカンデ」
地下100mにあり、壁面には光電子増倍管が無数に均等配置されてます。
この作品は個人的にはどちらかというと被写体勝ちな気もするのですが、
やっぱり生で目の前にすると、圧巻でした。
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名称
ANDREAS GURSKY | アンドレアス・グルスキー展
会期
2013年7月3日〈水〉→9月16日〈月・祝〉
休館日
毎週火曜日
会場
国立新美術館 企画展示室1E
開館時間
10:00-18:00 金曜日は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
主催
国立新美術館、読売新聞社、TBS、TOKYO FM
後援
、 、 InterFM
協賛
大日本印刷
特別協力
ぴあ
協力
全日本空輸、Sprüth Magers Berlin Lond

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