2011/06/06

東京企画構想学舎 伊藤直樹学科 授業ログ No.04 河尻亨一氏 (2010/11/08)

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前回までのログ
  
東京企画構想学舎ログの第4回目。この学舎では【10人セミナー】【学科授業】に加えて【グループワーク】を、授業と並行して進めていきます。最終講ではの発表を当面の目標とし、さらには、「実際に世の中に価値として具体化する」ことが最終目標。実在する企業や団体などに売り込みに行くことを真剣に念頭におきながらも企画を詰めていくことこそ、この学舎が単なる「お勉強セミナー」とは違い、実学に理念をおいているということを体現しているってわけです。今回はそのグループワークのキックオフの回。当学科を「担任」という形でプロデュースしてくださっているキュレーターの河尻亨一による、「企画の作り方・進め方」のレクチャーでございます。

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 河尻亨一氏 (キュレーター)
銀河ライター主宰(元「広告批評」編集長)/HAKUHODO DESIGN(キュレーター)
2000年「広告批評」に参加。これまで企画・取材を手がけたおもな特集に、
「エコ・クリエイティブ」「歌のコトバ」「箭内道彦 風とロック&広告」「Web広告10年」「ワイデン+ケネディ」
「FASHION COMMUNICATION」「テレビのこれから」「オバマの広告力」などがある。
書籍編集・寄稿/連載・インタビュー・イベントプロデュースなど、
「編集・キュレーション」を軸足に幅広いジャンルで活躍中。
東北芸術工科大学客員教授も勤めている。


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【流行る企画】とは?

いい企画とはどんなものか? それを考える上でまず、「今年、世の中で流行っているもの・これは新しいと思ったもの」をたくさん書き出してみることから授業はスタート。ジャンルや商品・サービスの種類は問わずに、生徒のみんなで自由に発言して、書き出していったわけです。

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【出てきたもの】 10/11/08 時点
おねがいランキング・悪人・もしドラ・K-POP
Akinator・龍馬・TGC・池上彰・自転車・AKB48・Ustream
ニーチェ・ONE PIECE・グルーポン・ラー油・ラブプラス
女子会・歴女・ギャル/ギャルママ・スカイツリー ・・・
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一例ですが、このような感じ。僕含め生徒の皆さんも、「マーケター」「SE」「クリエイター」「事務」「営業」「人事」などなど、様々な業界の様々な職域を担っている人が混ざっているので、それによって流行っているものとして挙げられるものもまったく違ってそこも面白い。【イベント系】【書籍】【広告キャンペーン】【商品】【サービス】【Web・アプリ】【ボランティア・援助】などなど・・・ そこから見えてくる個人個人の興味関心分野・アンテナの方向性を見定めながら、うまく散らばってシナジーするように配慮し、チームを決めました。人数構成としては、6人チームが4つという形。


企画する上での考え方

この学科のグループワークのテーマは、「企画」ということのみ。学科側から、特定クライアントをイメージせよとか、商品・商材はこれで!とか、そういった指示は特になし。「しっかりと世の中に具体化することまで念頭に置いた、確かに価値を帯びた企画」であれば基本的には何でもOKっていうことです。ただ、それだといくら何でも広すぎて取っ掛かりが持てないということで、河尻さんから企画を見るうえでのポイントが挙げられました。

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企画を評価するうえでの5つのポイント
【なんらかの解決を提供するもの】
【インサイトがそこにある。かつシンプルな企画】
【なんらかの体験を促すもの】
【うわさになるような面白さを帯びたもの】
【実現できそうな目処が立つもの】
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この5つのポイントは伊藤直樹氏や中村拓志氏のこれまでの授業からも見えてきたポイントだし、これから登場する千房けん輔氏や野村友里氏、幅允孝氏にも共通するエッセンスだろうと河尻さん。加えて、伊藤直樹さんが企画する上でもっとも大切にしているであろう視座を、伊藤直樹学科ということでひとつの条件に挙げました。

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【なんらかの空間・場所を設定し、そこでの体験・身体性を企画に盛り込む】
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文化国境を越えて人間に共通する、「身体」と、そこから立ち上がる、「感情」に着目することで、伊藤さんの志向する、「みんながイイね!という強い企画」を考えるヒントが得られるだろうということ。身体を介して強い感情を見る人触れる人に呼び起こすことによって、現状の世の中にある課題や問題点を、今よりちょっとでも良い方向に持っていくような、そんな企画を考えていくことになりました。

その上で、冒頭に書き出した、「今年流行っているもの」を河尻さんが簡易ながら象限分けしました。軸は2つで、【デジタル⇔トラディショナル/アナログ】 【コンテンツ⇔体験】 この分けでいったときの、今回この学科で考えて見てほしいのは、【トラディショナル/アナログ×体験】ということになります。デジタルが隆盛を極める今の時代だからこそ、まだ着目されていない人間の身体に基づいた体験価値。それをある場を設定して立ち上がらせるということですね。

何から考える?

では、何から決めていけばいいのか?クライアントからオファーがある場合と異なり、今回はゼロからの企画。何かきっかけを自分の中から考えないといけないわけです。ここで大事にしてほしいというのが、「個人が日ごろから思っている・抱いている”理念・信念”」というわけ。「もっとこうすればいいのに!」「自分だったらこれをこうする」「何でこうなっちゃうのかなこれ・・・」などなど、日ごろの自分が何気なく感じ取っている、怒りや不満、あるいは改善のアイデアなどなど。それを実際に【企画】と呼べる域まで昇華してみるのが、一番熱量の高い企画の発想につながるのではないかと。

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メンバーから出てきた「問題意識」の一例
【食物廃棄世界一の国、日本】
【デジタルディバイドにはじまる、知識格差】
【限界集落】
【日本の就活/就労は不自由だ】
【英語教育はなぜうまくいかない?】
【ショービズが高価すぎる国、日本】
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その上で、【売り先はどこなのか?】【企画内容はどんなものなのか?】【本当に自分たちのチームの力で解決まで導けそうか?】などを考えていく流れになったわけです。まずは、【世の中に眠っている課題・問題】に気づくこと。それを採集していくことがメンバー各自の宿題となったところで、この回は終了しました。


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講義から、考えたコト

今回はあくまでも【グループワーク】の回だったので、講義からというものはないのですが、改めて実感したのは、「みんなが共感するポイントを探ることの難しさ・重要性」ですね。年齢も性別も異なるメンバーが、共通の問題意識を心の底から共有し、みんなでその問題にトライする。それには、説得や知識の共有も必要になってきますが、何より「探すこと」が重要なのかなと思います。普遍的に、広くあまねくみんなが関心を持っているフィールドやトピックを、今まで誰もトライしたことのない視座・方向性のアイデアで解決へと導く。そのためには、「探す」ことが何より重要。メンバー間の対話・相互理解はもちろんのこと、世間のセンサーがどちらを向いているのかをつかむ肌感覚が、企画のテーマを決めるすべてになるんだろうと、痛感した初回グループワークでした。

よくよく考えれば、世の中の多くの人の意識や態度・行動を動かす影響力の大きい企画というのは、それを絶対にはずしていないんですよね。そのセンサーを立てることからはじめよう、というのが河尻さんの裏の狙いだったんじゃないかなと今は思います。

いかに日常生活で、「気づける」か。ここから約4ヶ月間の、「気づきフェチ」生活が始まったわけです。

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次回、第5回はブックディレクターの幅允孝氏のレクチャーでございます。「本」という対象に対する”偏愛”の強さと、その思いが企画にどんなポジティブインパクトを及ぼすのか。具体的な事例をふんだんに交えての授業になりました。近々アップいたします。。。

2011/06/03

脳トリガーと朝ルーチン

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朝から会社のPCが連続してクラッシュ。今はなんとか安定してるのでこれが書けているわけですが、本来書こうとしてたネタを書く気力がうせたので、徒然書きをしている次第。

何が一番情けないって、PCごときが起動しない朝っていうだけで心が荒れる自分の器ですよほんと。確かに今日はせっかく早起きして、ちゃちゃっと仕事を終わらせて飲みにいくつもりではあるにせよ。もっといってしまえば、「別にPCなんて起動しなくてできる仕事はたくさんある」にもかかわらず、PCがつかないというだけでなんとなく自分の作業に対するモチベーションごとショートして、まるごと止まってしまう脳、こいつが情けない。

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ファーブル先生は昆虫実験の一環として、確かハチか何かに対して、「巣作りおよび子育て」の工程に介入して、いわば「手伝ってあげちゃう」実験をしたことがあって。結論からいうと、ハチは死んでしまうんですよ、プログラムがバグって。ひとつひとつの工程が連続した流れになっていて、その直前にやっていたことがトリガーになって次にやることがダウンロードされているんでしょう、脳から身体に。それを人が横取りしちゃうと、そのままグルグルその場で歩き回り続けて、のたれ死んじゃうわけ。

人間は昆虫じゃないから、外的環境の変化に応じて、もっとも自分の生命に安全で最良の判断をその都度、脳で判断できるわけで、遺伝プログラムからその意味で、離脱できる。「決まりごとから離れられる、という決まりごと」を頭の回路に持てているっていう感じでしょうか。それなのに、どうもPCが止まっているという状況は自分にとって、いろいろなトリガーを引けない状態ってことらしい。

「現代人はデジタルデバイスに依存しすぎである」なんていう一般論はここで論じても仕方なし。大事なのは、本当にやりたいこと・気持ちいいことを、惰性じゃなくてちゃんとその都度、身体と脳で判断して、そのとおりに身体を導いてあげることなんでしょうね。もちろん、ルーチンは人の精神を安定させたり、その安定した精神の上にしか成り立たないクリエイティビティもあるでしょうから、それはそれで大事なんだけどさ。なるべくそのルーチンは、身体性を伴ったものの方がいいんだろうよきっと。BRUTUSの朝飯特集をたまたま昨日読んだんだけど、どのフィールドで活躍されている人でも、一流の人は朝飯にも何か流儀がある、ルーチンがあると思うし。朝くらい、身体が喜ぶルーチンをしたいっすね。その上で、さて何やろうか。


砂漠とか、塩湖とか、そういうデジタルバイバイな日々をこの夏は過ごしてみるのもいいかもね。完全なる孤立。嫌いじゃない。


2011/06/02

東京企画構想学舎 伊藤直樹学科 授業ログ No.03 中村拓志氏 (2010/11/01)

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前回までのログ
  
少し間が開きましたが、東京企画構想学舎ログの第三回目。初回、二回目の伊藤直樹氏の【企画とは何か?】の授業(詳しくは上部リンクを参照)を受けて、今回からは伊藤氏が招聘した様々な異なるフィールドで活躍している『特別講師』によるオムニバス講義です。伊藤流との相違点や共通点、そこから見える”企画力”の本質について迫れたらなあなんて思って受講してました。まずは、第三回の建築家【中村拓志氏】の授業をば。”空間”と”そこに滞在する人という動的な存在”、”そこから立ち上がる感情”について、独自の見方が垣間見えて、個人的にはかなりの目うろこ授業でした。


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 中村拓志氏 (建築家)

NAP 建築設計事務所代表取締役/1974 年東京都生まれ。1999 年明治大学大学院理工学研究科博士前期課程修了。
隈研吾建築都市設計事務所を経て 2002 NAP 建築設計事務所設立。
主な作品「lotus beauty salon」、「Dancing trees, Singingbirds」他。
受賞歴 JCD Design Award 2006 大賞、グッドデザイン賞 2008 金賞、JIA日本建築家協会賞、INAX デザインコンテスト金賞他。
著作「恋する建築」(アスキー)、「微視的設計論」(INAX 出版)。共著に「地域社会圏モデル」(INAX 出版)。


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企画には、【新規性・批評性】と【ビジョン】が必要

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『企画とは、企て、画すること。(planning) 新規性批評性に加えて、
企画の背景には問題意識に裏打ちされた、ビジョン、構想が必要である。』
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企画とは?という問いに対する中村さんの答えがこれ。計画や設計などの言葉と同質ではあるが、それを上手くやることだけ考えていては小手先のテクニックで終わる、ただの「作業」になる。そこに企画性があるか否かは、「新しいかどうか」「現状に対しての批評性や示唆・アンチテーゼがあるか」という【新規性・批評性】と、「どうしてその新しさ・批評性を帯びさせるに至ったか」という自分の内なる【問題意識】が必須であると中村さんは言う。

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『だからこそ、企画には普段の自分の生き様が出てしまう
なにがその業界や領域の今後のためになるのか。そこに自らの志や批判精神はあるのか。
そういった批判精神を持って、既存の枠組みや限界を見定めつつ、
その枠にトライする、議論する。心構えはとっても大事』
===

個別の案件やそのときに与えられる様々な制約など以前に、「そもそも自分がこの分野に対して抱く問題意識は何か」という理念・信念に立脚すべしとは、伊藤さんの初回授業でも同じことを言っていたところ。畑は違えど『そもそも世の中もっとこうあるべき・こうしたい』という大局的である種、主観的な目線は持ち合わせて企画に取り組みたいと思った次第です。


微視・振る舞い

では中村さんが建築業界や、建物・設計・空間の現状に対して抱いている問題意識・批評性とは何か?

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『架空の大衆を相手にするのではなく、
もっともっと建築を人間の感情に近づけたかった
というのが僕の問題意識であり理念。皮膚や服のように、人間の身体にもっともっと近いものに。
身体に近いものはより強くビビッドに感情をつれてくる。
ただ建物を設計するのではなく、その建物によって規程されるそこでの人の振る舞い、
そしてその振る舞いからたち起こる感情までも、企画・デザインしたかった』
===

近代建築は、機能主義で大衆向けのマスプロダクトで、いわばそこに住んだり滞留する人々を虚視”的に捉えて企画されることが長らく主流だった分野。虚視的とはつまり、平均を扱い、架空の"大衆"を対象にして考えてしまうということ。それでは、そこに住むある一人の人の心の機微がその建物の中にいることによって、実際のところどのように遷ろうのか分からない。それに対して「微視」という独自の視点を持って企画に取り組んでいると中村さんは答える。


===
微視する・・・対象に凄く寄って見ること。
虚視する・・・対象から凄く引いて見ること。』
===

人を徹底的に観察し、どのような外的要因が、その人にどんな振る舞いを誘発し、その振る舞いによってどんな気持ちになるかを、慮り尽くす。それによって、彼の志向する、「建築によるコミュニケーションデザイン」は実現されると。たとえば近代建築が機能性の無い無意味なものとして否定した、装飾について。中村さんは装飾を「目線の振る舞いのデザイン」だと思っているそうです。たとえばゴシックの教会では、人の目線が下から上に上がって行くことをデザインされていて、天井からは後光は指すという仕組み。目線の動きとともに感情がデザインされている、すごく微視的な発想だと中村さんは言う。視線をデザインし、行為をデザインしている。そしてそこに、感情を立ち上がらせる。





===
『なので僕は、いきなり図面を引き出すなんてことは間違ってもしない。
最小単位である、”一人の人”からイメージを始める。
たとえば個室の美容院、木を避けた書斎、屈んでくぐるような小さなエントランスなど。
人に非常に寄った一部屋を形作り、それを反復させて全体像を形作る。
そうすることによって、人の振る舞いから離れないように、全体像がイメージされる。
===

そしてそれは、決して偏った際物を作るためにやっているのではなく、”身体性・振る舞いこそ、大勢の人に普遍的に共通する行為であり、そこから立ち上がる感情も普遍性が高い”という信念に基づいてのこと。「せまいところをくぐると、向こうに何があるかワクワクする」「暗くして視界を奪うと、床のテキスタイルに対する足の裏のセンサーが鋭敏になる」などなど。中村さんは自分の身体を使って、いろんなことを実際に体験しながら、身体感覚と感情を量っていくわけです。そしてそれは今の時代だからこそ必要な感覚だと中村さんは言います。

===
建築とは、振る舞いをデザインすることなのではないか。
振る舞いは、かなり普遍的に共有された感覚なのではないか。
お辞儀、田植え、盆踊りなどの共同身体感覚は古来から共同体を良好に保つために
どんな文化にも存在してきた、身体を共有している感覚。
振る舞いが重ねられて行くことで、感情の共有が生じる。
建築を通じて、小さな振る舞いの共振をどう作るか。
個の時代と言われて久しいが、一方でソーシャルメディアで人とつながることにも
カタルシスを感じるのが現代の人たちだと思うし、
建築によって共同体のキズナのようなものをどう高められるかが、最近の自分のトライ』
===

実績に見る、「振る舞いのデザイン」

実際に中村さんが手がけた作品を見せながら、どのような意図をもってどんな振る舞いを誘発したのか。講義の後半は、写真を見ながらの作者本人の解説で進んだ。


【録 museum】 2010年
栃木県小山市のカフェ・ミュージアム
植林によって林を作り、木に囲まれた美術館を目指し、
建物の屋根までも枝を避けるように反らせたシェイプに。
今後も林が成長していくことも計算に織り込んだ。
枝を避けることによって建物内が狭くなるわけだが、
それを逆手に取り、「屈む」「くぐる」「曲がる」などの身体性も設計。
”身を縮めて、元に戻す”という振る舞いと、
それによって立ち起こる、”気持ちの切り替え・異空間認識”
美術館という非日常体験を愉しみたい建物の役割と符号させた。

  
【Lotus Beauty Salon】 2006
名古屋近郊のビューティーサロン
サービスの在り方を、建物側からより良質なものに規程・誘発できないかという
チャレンジが出来たという作品。
「美容院でのカット中の姿は、あまり人に見られたくない」
というお客様の隠れたニーズを鑑み、
施術ブースを個別に仕切った。
また、美容師同士のコミュニケーションの阻害にならないよう、
立ち上がると頭が出る高さにブースを設定。
閉塞感を極力押さえた白地と、奥行きを演出し空間を広く見せるために、
僅かに色を溶かしたウルトラパステルでカラーリング。
”おもてなし”と”サービス効率”の両立を、
”目線の振る舞い”に着目して設計した作品。




【House SH】 2006
青山にある個人邸。通称、「オシリハウス」
狭小かつ北向きという悪条件の中、
道路側を、膨らませた壁で覆うという大胆な設計を敢行。
天窓からの光が、白く外側に膨らんだ内壁を這うように反射し、
室内全体の明るさを実現するとともに、縦方向の目線の動きを誘導している。
また、ふくらみの末端は座ったり、子供なら寝転んだりできる大きさ。
壁に触る・壁に触れるといった、
住宅との触覚のやり取りを実現することで、
この家にしかない、愛着の作り方を目指した。

  
  
【Dancing trees, Singing Birds】 2007
恵比寿にある集合住宅
元々、昔からの鬱蒼とした森があった土地に対して、
可能な限り木を切らずに住む住宅のあり方を模索した結果、
「木が住宅の付加価値になれば、容積を犠牲にしても賃料で取り返せるのでは?」
という全く新しいトライに結実した作品。
樹木医と契約して、根の広がり、枝振りを全部把握したり、
三次元測量によって台風時の木の挙動シミュレーションを尽くすなど、
建築業者と時に口論になりながらも、徹底して木を微視し、把握した
借景はおろか、森と完全に一体となった建物は、
いびつさが溜まらない魅力になった唯一無二の空間になっている
自然と人が共生した新しい関係を築きたかったという、意欲作。


【House C 地層の家】 2008
南房総の海岸に立てられた個人邸。
美しい地層が現れる地質や、海岸線などの景観を活かすべく、
天井や外壁を土で仕上げた
土での仕上げには施主にも参加してもらうことにより、
建築工程から建物に能動性と愛着を持ってもらう試みも。
また使用した土は南房総の現地の土。
建材マイレージ=移動コストの少ない現地の土を使った。
天井に草を生やすことで自然の断熱効果を生み断熱材代をカットするなど、
自然との調和とコスト合理性を両立した意欲作。





「振る舞いを微視する」という中村さんの流儀は、キャリアの中でいつ意識されるようになったか?』という質問に対して、商業施設の経験が大きかったと中村さんは答えた。主客がある空間の中で、人を「おもてなし」しなくてはならないのが商業施設が帯びた役割。ビジネスというある意味、あからさまに結果が出てしまうフィールドでおもてなしに最適な建築を考える中で、人の行動と感情を深く深く慮る経験が出来たとのこと。



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講義から、考えたコト


あるときはそこに住まう施主さんや居住者、あるときはそこに来るであろうお客さん、またあるときはそこで働く従業員。様々な意図・目的を持ってその空間に足を踏み入れる人を微視することで見えてくる、人の身体性・振る舞い。それをたくみに取り入れながら、その建物が帯びるべき役割・意味性を、与件や制約をクリアしつつ形にする中村さん。彼の作品にはその思想・視点が通底されているのが、その形から直感的に分かる。

加えて思うのは、「和」の考え方を非常に大事にしているということ。元々日本には茶室のにじり口など、建物側が人に振る舞いを規程しそこに感情を立ち上らせるという、一種のアフォーダンスの考え方は根付いていたように思うんですね。西洋から入ってきたマスプロダクト志向に対して、中村さんの見ている方向はある種、建築物としてのアウトプットもそこに至るまでに経る「人に対する微視」という面でも、和風の考え方が反映されているのかなあなんて思ったわけです。

マーケティングの世界でも、【定量データと定性データ】のどちらをどの程度信頼し、根拠として判断を下していくかは永遠のテーマだと日頃仕事をしてみて思うわけです。マーケティングそのものが西洋的・マスプロダクト的発想に元々は立脚した考え方なので、微視だけで突破できる領域ではないんだけども、ある仮説を得るとき、今までにない新しい価値を帯びた企画を発想するとき、みんなの平均点からだけでは絶対に出てこない。そのときに、中村さんのいう「微視的思考」は分野に関係なく必要なんじゃないかな。


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最後に、次回の授業までの宿題が出ました。

微視的視点をもって【身体性・振る舞い】と【そこから立ち上がる感情】まで設計した企画を自由に立案せよ。

そこに何らかのアクション・行為があり、そこから立ち上がるだろう感情と、その場が持つ社会的・ビジネス的目的を上手く合致させた企画を考えるというわけ。難しい! ただ、身体性については伊藤さんも言ってましたが、ともすれば人類共通の行為であり、そこから立ち上がる感情も文化・地域によってもそこまで差がなく共通のもの。上手い気づきが得られれば、今までに無かった、かつみんなが共感してくれる企画が出来るかもってわけです。こちらの宿題の講評を含めた中村さんの2回目の講義はまた後日紹介します。

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次回、第4回はグループワークのキックオフということで、当学舎モデレーターの河尻亨一氏のレクチャーでございます。また近々アップいたしまーす。

2011/06/01

今月の”食べた!” ~2011.5月~

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ゴールデンウィークもあったりなんかして、5月はおいしいものたくさん食べ過ぎた!って先月も言ってた気がするけども・・・ 感謝感謝で振り返り。
(店名から食べログにリンク飛ばしてあるので、詳しくはそちら参照)

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・恵比寿【バー・ブルー】 バー  ☆4
・日光【カフェレストラン匠】 洋食屋  ☆3
・日光【コーヒーハウス ユーコン】 カフェ・カレー ☆4
・日光【山のレストラン】 洋食レストラン ☆5
・乃木坂【おやじのせがれ】 ホルモン・焼肉  ☆3
・七里ガ浜【bills】 オセアニア料理  ☆4
・鎌倉【オクシモロン】 カレー・カフェ  ☆4
・鎌倉【コクリコクレープ店】 クレープ  ☆4
・五反田【BONHOMIE】 フレンチ・ビストロ  ☆5
・渋谷【やさいや】 和食・鴨鍋  ☆3
・渋谷【茶亭羽當】カフェ  ☆4
・銀座【朧月】つけ麺・ラーメン ☆4
・渋谷【鳥重】焼き鳥・鳥料理  ☆5
・六本木【つけ麺TETSU】 つけ麺・ラーメン  ☆4
・新橋【まるに】 焼肉  ☆4
・銀座【八蛮】 居酒屋・ブルーワリー  ☆3
・麻布十番【サヴォイ】 ピザ  ☆4
・銀座【LAZY】イタリアン  ☆5
・用賀【用賀倶楽部】 イタリアン  ☆3
・渋谷【グランドファーザーズ】 バー  ☆4


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☆☆☆今月のベスト3☆☆☆




【山のレストラン】
日光の霧降高原の崖の上にある、
欧風料理のお店。
テラスの特等席からは、天気がよければ
霧降の滝が見えるという素晴らしさ。
料理は全体的にてんこ盛りなので、
おいしいけど、要注意です。
オススメは”ポークリブ”と、デザート全般



【BONHOMIE】
五反田にある小さなフレンチビストロ。
食べログ評価がやたら高いせいもあってか、
予約必です。それもなかなか取れない感じ。
料理は全体的にしっかりまとまっていて、
お肉も野菜もデザートもスキ無くおいしい。
そして、リーズナブルなのが、大きいですね。
また行きたい行きたい行きたい。


 【銀座LAZY】
銀座一丁目にある小さなイタリアン・ダイニングバー
7Fとかにあるので気をつけないと見つからない。
料理はどれもほんとにおいしくてですね、ワインと合う感じでして。
【うにのクリームグラタン】【パングラタン】【渡り蟹のクリームパスタ】などなど、
クリーム系料理が特に吃驚します。
遅くまでやっているので、金曜とかにいってウダウダしたら楽しいかも。


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という5月でした。6月こそはエンゲル係数を下げないとほんとにお金がなくなってしまう・・・ 反省反省。まあでも、おいしかったからいいか笑 だれかおいしいとこつれてってください今度!
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